ウォーター
余白
ウォーター
君と目が合った時、心臓が止まった気がした。
その目は、まるで氷のようだった。
触れた瞬間、僕の心臓は凍りつく。
氷の前では誰もが丸裸にされる。
見せたくないものさえ、容赦なく暴かれる。
君の視線から逃れられる者がいるものか。
逃げたいのに、逃げたくない。
僕はその冷たさに、釘付けになった。
それなのに、君の目はすぐ水に変わる。
温かくも、冷たくもなる。
僕の心を、簡単に揺らす。
その変化に一喜一憂し、同時に腹立たしくもあった。
わざと僕を見ないふりをするのか。
僕で遊ぶ君の水面に、触れたくなる。
水を揺らすのは僕の方だ。
揺れるのは君だ。
僕じゃない。
——それなのに、挑んでいるのは僕だけだった。
僕はわざと目線を外し、君が想像もしないだろう話題を投げた。
君の水面を揺らしたかった。ただそれだけだった。
けれど、僕の言葉は届かない。
霧に向けて引き金を引くようなものだった。
確かに撃ったはずなのに、衝撃も音も返ってこない。
君はそこにいる。
触れられる距離にいるのに、輪郭が掴めない。
水は揺れない。
いや、揺れているのは僕だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます