📚『空胎より、人へ――魂系全史と種族進化段階』

著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT

第1話📗 第二部|魂の宿り 第5巻 名素→心素→意素 ― 魂の入座座標ができるまで 5-2 心素・意素:感受性と方向性の母体

名素が灯ると、世界は見失わぬ。
だが見失わぬだけでは、宿りは起こらない。
灯は入口であり、中身ではない。
入口だけの場所に、魂は留まれない。

魂が結ばれるためには、
受け取る器と、向かう矢が要る。
それが、心素と意素である。

心素は、感受性である。
だが感受性とは、弱さではない。
心素とは、世界を受け止める壁であり、
同時に世界に触れる窓である。

意素は、方向性である。
だが方向性とは、目的ではない。
意素とは、まだ言葉にならぬ傾きである。
こちらへ向かってよい、という最初の許可である。

この二つが母体となり、
名素の灯は、座へと変わっていく。


5-2-1 心素:境界と共鳴(痛み・温度・匂い・安心)

心素は、先に境界として生まれる。
境界がないところに、感受性は成り立たない。
境界がなければ、世界は刺さりすぎる。
刺さりすぎれば、器は裂ける。
裂ければ、魂は近づけない。

境界とは、閉じることではない。
境界とは、量を調えることだ。
受け取れる分だけ受け取り、
返せる分だけ返す。
この往復の中に、心素は育つ。

心素が最初に学ぶのは、四つの尺度である。

• 痛み:これは近すぎる、という印

• 温度:これは冷えすぎ/熱すぎ、という印

• 匂い:これは相性が違う、という印

• 安心:これは続けられる、という印

これらは善悪ではない。
世界が器に与える、最初の測りである。
心素はこの測りによって、
「どこまでを内にし、どこからを外にするか」
を学び始める。

心素が育つと、共鳴が可能になる。
共鳴とは、同化ではない。
共鳴とは、外の波を内の波として写し取り、
そのまま壊れずに保つことだ。

共鳴できる器は、魂を傷つけない。
だから魂は、心素の厚みを見て近づく。


5-2-2 意素:初期の方向(好悪ではなく“傾き”)

意素は、まだ願いではない。
意素は、まだ目的ではない。
意素は、傾きである。

傾きとは、引力に似ている。
説明できなくても、そちらへ寄る。
理由がなくても、そちらが近い。
意素は、そうした「寄り」を、最初の方向として持つ。

この段階で「好き/嫌い」を持ち込むと、
意素はすぐに歪む。
好き嫌いは速すぎる。
速い判断は、世界を二分し、器を裂きやすい。

意素は、もっと遅い。
意素は「向きたい」「離れたい」という
微細な傾きとして、静かに生じる。
それはまだ語れない。
語る前に、まず“傾きがある”という事実だけが在る。

意素が立つと、散逸が減る。
散逸とは、どこにも向かえない状態である。
向かえない器は、疲れる。
疲れた器は、心素が薄くなる。
心素が薄くなると、世界が刺さる。
刺される器に、魂は宿れない。

ゆえに意素は、魂の宿りを支える。
魂は、傾きのない器に定着しない。
魂は、傾きを“帰り道”として使うからである。


5-2-3 心素が未熟だと:外界が刺さりすぎる

心素が薄い器は、痛みが多い。
痛みが多いと、世界は敵に見える。
敵に見えた世界を、器は拒む。
拒めば、共鳴が起きない。
共鳴が起きなければ、魂は影としても触れにくい。

ここで大切なのは、
心素の薄さは罪ではないということだ。
心素は、育つ。
育つとは、鍛えることではない。
育つとは、適切な量で受け取り、適切な量で返すことを
繰り返すことである。

世界側から見ると、
心素が未熟な器は「守る対象」である。
押し込む対象ではない。
だから母胎は、認知を急がない。
母胎が急げば、器は裂ける。


5-2-4 意素が未熟だと:散逸し、決められない

意素が薄い器は、方向を失う。
方向を失うと、すべてが等距離になる。
等距離の世界は、優しいようで、残酷だ。
どこへ向かっても同じなら、向かう理由がない。
理由がないと、器は漂い、疲れる。

漂いは悪ではない。
だが漂いが長すぎると、
記憶の座が育たない。
記憶が育たないと、同一性が揺らぐ。
同一性が揺らぐと、魂は帰れない。
帰れない魂は定着しない。

だから意素は、必要である。
意素は、人生の目的ではない。
だが意素は、魂の帰還点のための
最小の方向である。


5-2-5 心素×意素=入座耐性(魂が宿れる“深さ”)

心素は壁と窓を作る。
意素は傾きを作る。
壁と窓があり、傾きがあるとき、
器は「深さ」を持つ。

深さとは、重さではない。
深さとは、魂が触れても裂けず、
触れたまま保てる余白である。

心素が厚いだけでは、閉じる。
意素が強いだけでは、暴走する。
心素と意素が釣り合うとき、
器は適切な深さを得る。

この深さこそが、入座耐性である。
魂は強い器を求めない。
魂は「裂けない器」を求める。
裂けないとは、硬いことではない。
柔らかいまま、保てることだ。


5-2-6 母胎の認知:守れる/抱えられるの判断が生まれる

名素が灯り、心素が壁と窓を持ち、意素が傾くとき、
母胎は認知を深める。

母胎の認知とは、世界が世界として判断することだった。
ここで判断されるのは、二つだけである。

• 守れるか

• 抱えられるか

守れるとは、外界の圧を受けても裂けないこと。
抱えられるとは、傾きが生じても暴走しないこと。

この二つが肯われたとき、
魂は次の段階へ進む。
影が触れることが許可される。
影→本体→定着の礼法が始まる。

心素と意素は、魂の代わりをしない。
だが心素と意素がなければ、魂は来ない。
この二つは、魂の宿りの母体である。


小さな結び(次節への橋)

名素は入口の灯。
心素は境界の壁と窓。
意素は言葉にならぬ傾き。

三素が揃うとき、
魂は影として触れ、
本体として入り、
定着として戻り先を得る。

次節では、その礼法――
影→本体→定着が、なぜ世界を壊さないのかを記す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る