経営者の僕が、 いちばん無防備になれる部屋
エロティックなまじめ子
第1話 経営者の僕が、 いちばん無防備になれる部屋
普段の僕は、
声を張って、決断して、前に立つ。
「俺がやる」
「俺が決める」
社員の休みも、取引先との距離感も、
すべてが僕の判断に委ねられている。
誰かに頼る余白なんて、
最初から与えられていない立場だ。
ルームの扉が閉まる。
パタンと小さな音。
それだけで
世界が一段、静かになる。
照明は低く、
影はやわらかい。
音楽は流れているはずなのに、
意識には残らない。
彼女は、すぐには触れない。
ただ、視線だけが静かに落ちてくる。
値踏みする目じゃない。
探る目でもない。
「あなたのタイミングでずっと待ってた」
そう言っているみたいな、穏やかな目。
「今日は……よく頑張ってた顔だね」
柔らかな声。
張りつめた背中に、
そっと毛布をかけるみたいな言葉。
それ以上、説明はいらなかった。
タオルの気配。
衣擦れの小さな音。
彼女が動くたび、
静寂が、少しずつ形を変えていく。
「力、抜いて」
「ここでは、何も決めないで」
その言葉が、合図になる。
見えない首輪が、
音もなく、心に掛け直される。
命令じゃない。
強制でもない。
ただ、委ねる。
彼女の視線は離れない。
急かさない。
逃がさない。
彼女は知っている。
この沈黙こそが、
僕をいちばん深くほどくことを。
時間の感覚が、溶けていく。
強さも、肩書きも、
名前すら、
静かに床へ置いていく。
やがて、終わりの気配が近づく。
彼女は、最後まで慌てない。
「……また待ってる」
その言葉で、
胸の奥に、やさしい重さが残る。
施術が終わっても、
すぐには立てない。
静寂が、まだ、身体に馴染んでいる。
彼女の視線が、
もう一度、確かめるように落ちる。
「大丈夫?」
「風邪ひかないでね?」
僕は頷くと、
小さく、微笑う。
それだけで、十分だった。
扉を出る前、
世界はまだ、少しだけ、やわらかい。
肩書きを着直すまで、ほんの数分。
それでも、この余韻がある限り、
僕はまた、強い顔で立てる。
帰る場所がある。
それを知っているだけで安心して
前へ進める。
経営者の僕が、 いちばん無防備になれる部屋 エロティックなまじめ子 @EroticSeriousGirl
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