プレイボールのかからない世界|if短編集
ぴすまる
if① フルスイングは、響かない
※本作は全4話・各話1話完結のif短編集です。
人は、集まっていた。
理由は、分かりやすい。
俺が、いるからだ。
街の外れ。
草原の手前。
張られたロープの向こうで、
視線だけが、先に来る。
俺は、
何も言わず、
バットを肩に担いだまま、
一歩、前に出た。
魔物は、一体。
距離も、風も、地面も、
全部、見える。
――打てる。
迷いは、なかった。
振る。
フルスイング。
音が、
鈍く、
腹に残る音だった。
魔物は、
言葉もなく、
吹き飛んだ。
一拍遅れて、
歓声が来る。
拍手。
叫び声。
名前を呼ばれる。
でも、
胸の奥が、
動かなかった。
次も、
その次も、
振った。
当たった。
倒れた。
音だけが、
少しずつ、
軽くなっていく。
誰も、気づかない。
俺だけが、分かる。
――響いていない。
終わったあと、
拍手はあった。
礼もあった。
俺は、
バットを下ろす。
座る場所が、
見当たらない。
ベンチは、
どこにもなかった。
その日は、
勝った。
でも、
試合は、
終わっていなかった。
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