人生のドン底にいた主人公が、お笑いと出会い、自分の価値に気がついていく現代ドラマ作品です。
主人公は志望校への入学が叶わなかった男子大学生。
その失敗は父親の失望を生み、彼自身も進むべき道を見失ってしまうほどでした。
そんな彼が出会ったのが、不意に誘われたお笑いサークル。
場違いと感じながらもとっさに差し込んだ一言は、サークル内に静かな衝撃を与えます。
けれど、生来の性格は変えられず、お笑いの道は失敗の連続。
それでも主人公はお笑いに生きる意味を見出し、恐れていた父に逆らっても道を極めようとします。
お笑い芸人らしくない彼の知性は、世間にどんな評価を受けていくのか。
ぜひ読んでみてください。
囲碁や将棋を題材にした小説は多い。盤面を通して二人の人間がしのぎを削る様は、畳数枚の上から動かずとも密度の濃い心理描写が描ける。
似た構図が、漫才というジャンルを小説として描く際にも用いることができるのではないかと、本作を読みながら思った。例え何かから逃げた結果たどり着いたのだとしても。
センターマイクを挟んだ二人の人間、彼らを支える裏方、その家族、そして同業種や他業種の出役のライバルなど既に勝負師を巡る群像劇ができつつある。饒舌さそのものである漫才シーンはまだまだ描くべき可能性と余地がある。4分弱のレースの奥に無数の物語が横たわっている。