とある夏の日
夕どきにようやくヒグラシの声を聞き、夏本番がもうすぐそこまで来ているのを実感する。それでも、上がり続けるかに思われた気温は不意の大雨で停滞し、遅れてやってきた梅雨のように、湿った空気がどこか冷ややかでいる。
明日にはまた暑さが戻るのだろうか。それともまだ雨が降り続けるのだろうか。
寝る私の耳元を一匹の蚊が飛ぶ。その羽音はどうしてか、私の心を逆撫でする。暗闇の中、手で追い払うのが精一杯で、少し経てばまた戻ってきて私の血を狙う。
我慢もできず、蚊取り線香を焚いた。漂う煙がきつくて少し咳き込んだ。部屋に響いたその乾いた音は、外の雨音に余韻を許されなかった。
汗ばむ背に貼り付くシャツを軽く剥がして、鼻をかすめる煙の香に落ち着きを覚えながら、布団の上、まどろむ夏の夜は心地よくどこか優越でいる。
蚊に刺されたふくらはぎを足で掻いて大きなあくびをすれば、次にはもう朝がやってくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます