1話 巻き込まれました
バイトに向かいながら新作の小説について頭の中で思考する。
今日はどんな感じに物語を進めようかな。
そんな妄想をしながら、私の向かい側から高校生たちが歩いてくる。
高校生ってなんであんなにキラキラしているんだろうね。インドア派の私には眩しいものだよ。
と思いながら歩いていると突如足元が光り、地に足が着いている感覚が無くなり、訳が分からないまま落ちているのだけはわかった。
ちょっと待って! むりむりむり! 心臓がっ! 浮き上がってる感覚が気持ち悪い!
こわいこわいこわい!
「いっつ……」
思いっきりお尻うった……。
また青あざができちゃう。
「おおっ! 勇者様」
「ほかにも
「これで魔王を討てますね!」
え、なに。いきなり勇者とか巫女とかRPGの話? もしかしてゲームの中に入っちゃったとか?
でも私歩きながらスマホゲームはしていなかったよ。歩きスマホは危ないからね。
「あなたは?」
「え、あ……」
大騒ぎした後に、神官さんっぽい人が私に気づいたようで話しかけてきた。
こういう時に声が出せない。
まずここどこ。目の前にいる人どうみても外国人。
てかなんで相手の言葉がわかるの? 私外国語話せないのに。
そもそも、なんでお城っぽいところにいるの。
「あなたのスキルは何ですか?」
「えっと……」
スキル? なにそれ。そんな技能持ってないよ。資格とか自動車免許しか。
「混乱しているようじゃ。見てあげなさい」
なんか勝手に見られようとしているけど、プライバシーの侵害だよ!
水晶を持ってきて何かつぶやいているけど勝手に見ないで。オタクだってことがばれちゃう。
「巻き込まれた一般人。スキル『創作キャラクター召喚』と」
「なんじゃそれは」
「わかりません」
やだ、もう恥ずかしすぎる。いますぐここから立ち去りたい……。
どんなものなんだって周りの人たちの雰囲気でいっぱいだけど、大したものじゃないんだよ……!
「創作キャラってなんだよ」
「もしかしてオタクってやつなんじゃない?」
「草はえるんだけど」
追い打ちをかけるように高校生が馬鹿にしながら笑う声が聞こえたけど、もうここにいられない。
誰かが何か言っていたけど、何も聞こえなかった。
街の風景とか人の声とか気にならないくらい無我夢中で走っていたら周りは真っ暗。しかも、森の中で
「どうしよう、迷子だ」
携帯で誰かに助けを呼んでもらおうとしたけど、電波が入ってない。
持っていたカバンの中を確認したら携帯と財布。後バイト用の服が入ってた。
とりあえず、落ち着こう。森の中でこれ以上迷ったら最悪死んじゃう。
「……どちらにしても死ぬかも。サバイバルとか出来ないし」
走ったから疲れてお腹空いてきちゃったし、喉も渇いてきた。
空腹は我慢すればいいけど、渇きはどうしようもないからな。
「あ……」
泣きっ面に蜂ってことわざあるけど、本当に不幸なことって続くんだ。
雨が降ってきたから木の下に移動したら、まさか草むらから熊が来るなんて思わないよ。
親孝行できないでごめんなさい、お父さんお母さん。
近づいてくるクマに、何も見たくないと目をつぶったとき、軽い音と暗くてはっきりとは見えないけど、長い足と背中が見えた。
「あかり、無事か?」
上から声がして、見上げてみたらなにか髪型とか服装が私が書いた小説の主人公エヴァンに似てる人がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます