その卵の中身は、自分自身が大嫌いだった。
卵の中から、父鶏と母鶏とがいかに優秀か誇っている話を聞き知り、彼らの「立派」さ、彼らの期待に、到底およばぬであろう自分自身に、孵る前から圧し潰されていた。
自身が潰されたのならば、喪われた自身を求めて悔いて、何者かを憎むしかない。
彼は潰された自分自身を憎んで否み続けたあげく、自身をさらにどうしようもなく歪ませた。
そんな存在が、かつての自分自身にそっくりな卵と偶然に遭ったとき。
彼は、自身と向き合って、自身を取り戻すことができたのか……。
その答えを、どうかご覧ください。