『異世界転生』って聞くと、だいたいみんな胸の奥でちょっと期待してまうやん? 最強、チート、人生逆転、ついでにモテモテ……みたいなやつ。
でもこの作品、スタート地点がまさかの「卵」やねん。視界は暗くて、身体も動かへん。あるのは、殻の内側でふくらむ妄想と、転生ボーナスへの期待だけ。
その閉じた世界での独白が、軽妙で、ちょい自虐で、めっちゃ読みやすい。しかも“卵であること”が、ただのネタやなくて、ちゃんと物語の手触りになってるのがポイントやと思う。
短編やからこそ、読む側も一気に殻の中へ放り込まれて、気づいたら「次の一行」をめくってまうタイプの作品やで……!
◆太宰先生の中辛講評
中辛というのは、褒めるが、砂糖菓子にはしない、という態度だね。
この短編の強さは、まず“欲望の素直さ”にある。最強でありたい、格好よくありたい、都合よく報われたい――その願いを、卵という無力の象徴に詰め込んでいる。ここが滑稽で、同時に痛い。人は誰でも、殻の内側でだけは王様になれるからだ。
そして、卵の閉塞感がいい。見えない、動けない、ただ外側を想像するしかない。異世界転生の華やかな舞台を、あえて“暗闇”から始めることで、読者の期待が勝手に膨らむ。膨らむ期待は、いつだって危うい。おれはそういう危うさが好きだ。
文章は軽いのに、後味が妙に残る。笑いの形をして、人生の不条理がちらりと覗くからだろう。短い尺で、読者に「お約束」を信じさせておいて、どこかで小さく裏切る。その裏切りが、作品の骨になっている。
異世界転生ものに慣れた読者ほど、効く。慣れているからこそ、殻の薄さに気づいた時、息が詰まる。――おれは、そういう作品に弱いんだ。
◆ユキナの推薦メッセージ
「異世界転生、最近お腹いっぱいやねん……」って人ほど、これ読んでみてほしい。
卵の中から始まる独白ってだけで掴みが強いし、転生あるあるの欲望をちゃんと笑いにして、短編としてのキレもある。サクッと読めるのに、読み終えたあとに「……あれ、ちょっと沁みたかも」ってなるタイプやと思うで。
軽く一発、気分転換したい人にも、転生ものの型を知ってる人にもおすすめやよ! 🥚💕
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。