転生したら水でした。水として、雲として、水蒸気として、異世界のあちこちをめぐります。

水乃タマ

プロローグ 上

「はぁ、今日も学校だるかったなぁ。」

僕は水野。海と山に囲まれた、よく言えば風光明媚な、悪く言えば何も無い寂れた田舎町。そんなところに住む、高校生だ。こんな町に住んでいる若者なんて僕以外にいない。そのせいで友達と放課後に遊ぶことも気軽にできない。恋人なんて、夢のまた夢だ。

(そういえば最近、ここの住民が水死体として海で見つかることが多いって聞いたな。僕も登下校の時は気をつけなくては。)

最近は近所のおじいさんおばあさんたちの話題はこればかりだ。事件の可能性があるから警察が来たとも聞いている。

(まぁおそらく転落だろう。若者の僕には関係ない。)

そんなことを考えていると、後ろから誰かが駆けてくる音が聞こえた。

振り返ると男がものすごい形相で僕に向かって走ってきている。

(まずい!)

気づいた時にはもう遅かった。僕は男に首を絞められ、動けなくなった。

(意識が遠のいて…)



寒い。あれからどれだけの時間がたっただろうか。僕は目が覚めると船の上にいて、海に投げ捨てられてしまった。

(ダメだ…また意識が…)

僕は死んだ。



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