ここに一本のVHSがある。

　録画されているのは、とある裏ビデオである。撮影された年代は、女子高生モノが流行した90年代中頃のものと思われる。それも原本ではなく、ダビングされて画質が相当悪くなったものだ。

　このVHSを持っていた男性(40代)に話を聞いてみた。VHS自体は市販のもので、ラベルには一言「かっぱ」とだけ書かれている。

「もともと親父がそういうの好きだったんですよ。当時のマニアックな深夜アニメを欠かさず録画したり、変な地方のローカル番組集めたりとかしてましてね。ローカル番組の放送事故の映像とか、今でも取材が来て見せたりしてますよ。僕もそういう映像収集は好きなんですけど、90年代前半って結構そういうのが迫害されていたじゃないですか。マスコミがそういうのを煽った、って言いますか、ビデオ収集は殺人鬼の趣味みたいに言われていましてね。そんなこと言われても映像に罪はないって思うんですけどね。流石に悪意があって猟奇的すぎるものは僕も苦手ですけれども。たまにそういうビデオもあるんですよ」

　――このテープはどういった経緯で入手されたんですか？

「それがですね。どうやって手に入れたのか、おそらく不正なダビング品なのは間違いないんですけど、わかんないんですよ。おととし親父が癌になりましてね※。死ぬ前に、ビデオ棚を整理してから死んだ方がいいってことで生前整理じゃないですけどビデオ棚を大分整理したんです。貴重なものは売ったり譲ったり、僕がもらったりしました。だからこのテープ、多分気が付いたらあった、というところでしょう？」

　――そんなことがあるんですか？

「可能性としては、よく中古ビデオ屋やフリーマーケットなんかに行っていましたので、その中で何かとまとめ買いしたものの中に混ざっていた、というのが有力かなと思います。ただいつ、どうやって入手したのかははっきりしませんね」

　――そのテープを見つけた時、どう思いましたか？

「かっぱ、ですよ。何だよかっぱってって思いながら親父と再生したら、かなりアウトな裏ビデオでしてね。おそらく女子高生モノが流行し始めた90年代半ばだと思うんです。ビデオの子がルーズソックス履いてるんですよ。うわあ時代だなあって思いながら親父と見たんですよ」

　――お父さんと裏ビデオを見たんですか？

「そうなんです(笑)まあ、親子と言っても男同士ですし、それほど気まずい感じにはならなかったですね。そうしたら、何だかインタビューの様子がおかしくて。なんかこの女子高生、親が河童とか言い始めて、エッチをすると卵を産むとかとんでもないことを言い始めて。うわあ、裏ビデオというよりトンデモビデオだったって親父と爆笑しながら続きを見たんですよ」

　――他にもそういうビデオってあるんですか？

「トンデモな企画のビデオってこの当時そこそこありましたよ。今より人権意識が低かったからですかね？　女優さんに相当無理させているものも結構ありました。腹筋競争させて負けたほうが罰ゲームでビニール袋被って窒息プレイ、とか虫責め、とか。抜き目的じゃなくて軽くスナッフに近い奴とか。趣味が悪いですね。今の時代なら存在すらできないような企画、結構ありましたよ」

　――そういう企画の一部、ということではないんですか？

「最初は僕らもそう思ったんですけど、でもこの『かっぱ』のテープは何か違っていまして。確かにトンデモなんですけど、異様っていいますか、途中から明らかに裏ビデオの雰囲気じゃないっていいますか、真に迫ってる感じがとても怖いなーって思いまして。何より途中で切れちゃってるんですよ。最初も切れていて詳細がわからないし、後半もわからない。親父も趣味悪いなーって言ってました」

　――それじゃあ、拝見させていただいてもよろしいでしょうか？

「そうですね。とりあえず見てもらって、それでこの企画が本当かどうか皆さんには判断してもらいたいと思います。じゃあ、再生しますね」

　ここから問題の映像が再生されます。ショッキングな映像になりますので、心臓の悪い方などの視聴はご遠慮ください。

　※男性の御尊父は昨年亡くなられております。ご冥福をお祈りします。