転生した俺は、歌で世界を同期させる

@yu_sk531

プロローグ

終電は、とっくに終わっていた。


 蛍光灯だけが白く光るオフィスで、

 俺は椅子に座ったまま、画面を見つめていた。


 時計は午前二時三十分。


「……明日も会議、か」


 独り言は、誰にも拾われない。


 キーボードの上に置いた指が、かすかに震えた。

 胸の奥が、じわりと痛む。


(あ、これ……)


 息が浅い。

 視界が狭まる。


 倒れる瞬間、

 頭に浮かんだのは――

 後悔ですらない、どうでもいい願いだった。


 ちゃんと音楽を、聴きたかったな。


 *


 次に目を開けたとき、

 世界はやけに静かだった。


 知らない天井。

 知らない部屋。


 だが――

 身体が、軽い。


 肺いっぱいに空気が入る。

 呼吸するだけで、楽だと感じる。


 視界の端に、半透明の文字が浮かんだ。


【ステータスを確認しますか?】


俺は、小さく息を吐いた。


「……転生、か」


 ブラック企業で過労死。

 ありふれた最期。


(なら今度は、

 ちゃんと生きる)


 それだけで、十分だった。

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