第6話

「おっ、帰ってきたか?」


『アップル・ベアリーズ』では、黒スーツに黒サングラスのみるからに怪しい男達が縄で縛れて転がっている。銃痕があったり、物が散乱したりと酷い有様だ。


「なんかすっごいデジャブ」


今日もこれぐらい散らかった部屋を見たぞ。


「俺がネット使って調べてたらさ、突然コイツらが家に侵入してきたからボコった」


「見ればなんとなくわかる。それで、誰の差金だった?」


「製薬会社、昨日盗み出したSDカードを、取り戻しに来ただと」


あのロケランで吹っ飛ばされた依頼品。

それを取り戻すために製薬会社が、刺客を送り込んだのか? 余程、重要だったんだろう。


「まぁ? 情報を探す手間が省けたって訳だ。無駄足だったな一夜」


「えぇ!? アイツにモフられたの無駄だったりん!?」


がっくりと気を落とすベアリー。


「そんなことはない。下っ端が大層な情報を持ってる訳ないし、無駄じゃない」


「そうか、それは確かめてみないと」


久羽はバットで床に転がる男達の頭をツンツンと突き始めた。


「お前ら? 知ってること全部吐け、じゃないとこれだ」


そう言って、バットで床を叩く。体を震わせる。青い顔をして、ガチガチと歯を鳴らす。


「は、話すよ。知ってること全て」


観念したのか男の一人がそう言った。


「じゃあ、昨日の虐殺事件について知ってることを全て話せ?」


「わ、わかった。だからどうか命だけは、命だけは助けてくれッ」


「はいはい、早く話せよ」


男の頭を突きながら急かす。


「あの事件は、貴方達の襲撃が間接的になった試作品の暴走が原因です」


「あ? 下っ端ぽいのになんで知ってんだ」


「私達が会社専属の暗殺集団だからですよ。こう見えてエリート集団です」


「エリートにしては、ペラペラ喋ってる」


暗殺集団って言えば、尋問や拷問されても吐かない忠誠心があるものではないのか?


「命がなければ出世できませんからね」


・・・コイツは強かである。


「嘘ではない? 顔も声もしっかりと記録取ってるよ」


「えぇ、もちろん。話したので、この縄を外してもらえませんか?」


彼は縛られた腕を前に出す。


「それは無理、君たちは証拠として『自治隊』に引き渡すから」


私が電話を掛けると、数分後に武装した集団が店内に入ってくる。


「こちら『自治隊』!? 通報のあった重要参考人はこの転がった男達ですか?」


「そうだよ、早く連れて行って」


縄が手錠に変わり男達は全員、表の車に乗せられた。よし、コレで無実に一歩近づいた。

達成感で胸がいっぱいの私には、男達の「嘘つきぃ━━」という悲鳴は聞こえなかった。

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