当番

短編SS 当番


「なぁ? 今日はどっちが食事当番だ?」


「・・・覚えてない」


「じゃあ、俺が作っちまうぞ」


「よろしく」


ウチの店、アップル・ベアリーは店兼俺と一夜の住居だ。それならば当然、家事は二人の分担となる。


そこで俺たちは一つのルールを決めた。

一人が食事を用意する日は、

もう一人は掃除と洗濯をする。


他にもやることはあるが、基本的にコレさえやれば店は回る。


「今日は腕によりをかけるか」


職業柄、金に困ったことはない。時間さえあればどんなものでも作れるだろう。


「一番喜ぶのはアップルパイだが・・・」


甘味は晩御飯にはならんだろう。


「カレーでも作るか」


ちょうどルーは冷蔵庫にあったし、カレーに林檎は・・・まぁ合うだろう。


「そうと決まれば買い物行くか」


俺は金属バットを握りしめて、スーパー闇市へと向かった。


Π


スーパー闇市。すごい闇市という意味ではない。ごく普通のスーパーだ。普通の店やチェーン店が出店しにくいこの街で、唯一の小売店。


「らっしゃあせッ!?」


入店するなり、ごつい男に挨拶される。

少し首を動かして、辺りを見渡す。


客はヤクザやチンピラまがいが大半だし、店員は全員黒スーツのいかつい男だ。


俺は野菜コーナーに歩いて行くと、林檎・玉ねぎ・人参・ジャガイモをカゴに入れる。他にも惣菜やカレーの材料を集めると、会計を済ます。


「ありがとうございましたッ!?」


闇市に普通の店があるのは便利なんだがなぁ。

やっぱり、いかつい男ばかりのスーパーにはいいようのない、威圧感がある。そのおかげで、店として成り立っているのだろうが。


「やっぱ、普通のスーパー出来ねぇかな」


ぼやきながら店に帰った。

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