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趣味、放浪、食べ歩き。好きな物、アリス。君の為ならは幾らでも金を注ぎ込める。という程大好き。何処かおかしく、何をし出すか分からない女ではあるが、俺が見込んだ女である。


人の一面しか見ていないのに、『良い男』やら『良い女』と断定する人を私は信用しない。表面では差し当たりなく振舞っても、容赦なく縁を切りに掛かる。見るに値しない。

そもそもたった一面しか見ていないという時点で評価が覆る可能性がある、そういう奴は人の嫌な一面をチラつかせた時点ですぐに掌を返す。だから信用しない。

まぁそんな事を言ったら『可愛くない』とでも言われるだろう。安心して良いよ。私は私の事を好きな人に『可愛い』と言って貰えばそれで良いから。

そんな事を考えていると、ふと明日の予定が頭に浮かんだ。

「あー瑠衣たん。鏡花千円カットで前髪パツンの刑に処するから、先に行ってて。後で行く」

そう言うと此方を向いて瞬きをした。了承という意味である。相変わらず返事は無いが、分かっているなら問題ない。

「悪いね。有給取らせて。不機嫌にならないでよ? 珈琲一杯なら奢った……」

あー……都合の良い人は、これで私の事を『良い女』と定義するんだろうな。私の一側面しか見ないで、私が断った途端に『性格ブス』とか言うんだろうな。

「なんだ。珍しい。負い目があるのか」

「そうじゃねぇよ」

瑠衣の眉間に僅かに皺が寄る。あ、まずい怪しまれている。

「何だ。嫌なら最初から仕掛けるな」

とやかく突っ込みはしない。ただ自分の中で勝手に納得して、それで満足している。根掘り葉掘り聞かないところが瑠衣の良いところであり、嫌なところである。

だが誤解されたまま進むのは嫌なので、さっさと駒を進める事にした。

「……はいはい。何でもないですよ。ただ世の都合の良い人はただ自分に珈琲一杯奢っただけで、私を良い女認定するんだろうなって。舐めてんのかと思って口篭っただけ」

この都合の悪い私の一面見ただけで、『面倒臭い』、『何が良い女だ』とか言うんだろうね。

「それ如きで靡く俺だと思わないで欲しいな」

そう言ってちっと舌打ちをした。自分の分の珈琲は自分で支払っていた。

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