第98話 野菜の美味しい町へ行こう(3)
串肉を食べた私たちは、すぐにパジトーク町に向かうことにした。
パジトーク町に向かう道は、馬車が一台通れるか、通れないかくらいの細い道。大きな街道とは違い、人通りは多くない。でも、いつ誰と会うかわからないので、ユーコにお願いして結界をはってもらった。
人がいない道なので、気持ちいいほど、走る、走る。
一時間もしないうちに、道の前のほうに小さく荷馬車が走っている姿が見えてきた。
「あれ、もしかして、パジトーク町に戻る馬車かな」
『そうかもしれんな』
「マーコ、止まって」
「みゃう?」
「あの馬車の人に声かけたいの」
「にゃー」
さすがに大きな猫状態の二匹が現れたら、御者だけではなく、荷馬車を引いてる馬も怖がりそうだ。
マーコたちが立ち止まってくれたので、私はマーコの背中から降りる。すぐにユーコが結界を解いた。
子供の姿に変わったマーコとニーコ、そして私の三人は、少し早歩きで荷馬車の後を追いかける。
マーコたちが先を行くけれど、私自身も若返ったおかげもあってか、なかなか軽快な走り。
荷馬車は前の町で野菜を売り切ったからか空っぽ状態で、のんびりと走っている。気が付けば、マーコとニーコは荷馬車に並走している。
「こんにちはー!」
「こんにちはー」
元気な声で挨拶するマーコとニーコ。
「うわ、こ、こんにちは。嬢ちゃん、坊ちゃん、元気だねぇ」
御者の席に座っていたおじさんが、驚いた声をあげる。
それはそうだ。のんびり走っているとはいえ、馬車の脇を余裕の表情で走っているのだから。
「おじさん、この先のパジトーク町の人ー?」
「おお、そうだよ」
「美味しい野菜、いっぱいあるー?」
「あははは、うちの町の野菜は美味いぞー!」
「だってー」
マーコが振り向きながら、私に声をかけてきた。それにつられて、御者のおじさんが後ろを振り向いた。
「こ、こんにちは」
さすがにマーコたちみたいに余裕とはいかない私は、息をきらしながら、片手をあげて挨拶をした。
「おやおや、大丈夫かい」
よほど私がしんどそうに見えたようで、おじさんが馬車を止めてくれた。
「はぁ、はぁ、す、すみません」
「お前さんたち、うちの町に行くのかい」
「そ、そうです」
息が整ったところで返事をする。
「美味しい野菜が買いたくて……町まで、あとどれくらいですか」
「おお、わざわざ町まで買いにかい。嬉しいねぇ。ここからだと、
思ったよりも、近そうだ。
「よかったら、乗って行くかい?」
「え」
マーコとニーコの本気の走りだったら、十分くらいで着きそうな気がするけれど、荷馬車に乗りながら、おじさんに町のことを聞くのもいいかもしれない。
「いいんですか」
「いいさ、いいさ。こんなおちびちゃんたちを町まで走らせるのは、わっしの胸が痛むんでな」
そう言われている本人たちは、おじさんの気遣いなど知らずに、荷馬車を引いている馬と何やらおしゃべりをしている。
馬のほうも怯えることなく、ブルルルと反応を示している。
他の人から見たら、ただかわいい風景なのかもしれないが、あれは本当に馬と会話をしていそうだ。
「じゃあ、お邪魔させていただいていいですか」
「いいよ、いいよ。気を付けて乗りな」
私たちはおじさんの言葉に甘えて、荷台に乗り込んだ。
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