風邪をこじらせて嗅覚を失った作者の、
波打つような心理が活き活きと描かれています。
嗅覚と同時に味覚も感じなくなって、
普通なら悲しみに暮れるところですが、
むしろその状態を肯定的に捉えている、
冷静かつ強靱なメンタルに驚かされます。
とはいえ、だんだん恐怖が強くなって、
自らの死の場面を想像したりするのですが、
その筆致には淡いユーモアが漂っていて、
読者は重たい気分から解放されることでしょう。
そして結末を迎えるのですが、
とても自然な着地が待っています。
とにかく嗅覚の喪失体験を、
臨場感あふれる文体で描ききったことには驚嘆しました。
その鋭敏な感性が紡いだエッセイは、
決して飽きることのない秀逸なものと言えるでしょう。
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