『気づかなければ知らないことは、気づかなければ存在しないことになる。今でも、わたしはそんなふうに思っている。』砕かれたかけらを拾いあうように、少女は彼を追い、彼もまた、何かに追われながら、自身のかけらを弔い続ける。知ろうとしなければ、ないも同じ。人の心だって同じこと。奪われた言葉をそれでも紡ぐ二人の姿を、きっとあの月は、照らしていたことだろう。たとえ弱く鈍くても、それもまた光であるのだから。