第17話 マーリンの罠

「聖なる光がリスク記す、ステータス!」


シスターマリアの杖から放たれた柔らかな金色の光が、俺の体を包み込む。

次の瞬間、空中に文字が浮かび上がった。


―――――――――

名前:リスク(村人)

レベル:20

体力:20

攻撃:0

防御:0

素早さ:0

魔力:0

賢さ:165

運:180

この世界で、最も弱いスライムに負けた男。

―――――――――


「リスクさん、このステータスでボス戦を戦うなんて自殺行為です。戦闘の足手まといなので岩陰で隠れていてください。」

シスターマリアが魔人ゴーレムへ戦闘態勢にはいるべく体を小さくかがめる。


足手まとい…俺の男の小さなプライドが砕けた。


俺の目の前に絶望的な0の数字が並ぶ、シスターマリアの言うことは、いつだって正しいのだ。それより悲しかったのが魔法ステータスがついに俺を(村人)だと認識したことだ。お前ついに俺を村人だと認めたな。すごいじゃないか。レベル20で、あッ運が180 になったんだ。結構高くねぇ。


ちなみにゼロの能力者を確認するには、シスターマリアの詳細を言わないと次のページが見れない。どうでもいいが。


「リスクこと村人!岩陰に隠れまーす!」

俺は潔くそう宣言して、岩の裏にダッシュで身を潜めた。

そして魔人ゴーレムを見る。山と同じ高さだ、デカいデカすぎる


マーリンが俺のステータスをチラ見する。

(うわぁー……村人酷いわ、私がこのステータスだったら自殺するわ……やっぱりゼロの能力者はシスターマリアに決定ね)


ドスン……!


山脈の守護者・魔人ゴーレム。

その巨大な体躯が、ドスン、と地響きを立てて立ちはだかる。


<i947870|4583>


名前 魔人ゴーレム

体力 : 700

攻撃 : 210

防御 : 320

素早さ:58

この世界で岩石と魔人が合わさったモンスター岩のように固く物理防御が高い。


戦闘が始まった。


「聖なる風よ、勇者アルベルトに俊足を S(エス)ペート!」


アルベルトの足元に緑色の小さな竜巻が発生し、身体が一気に軽くなった。


「有難う、シスターマリア。足が遅いゴーレムにうってつけだぁ」


「聖なる光が勇者アルベルトを記す、ステータス!」


杖から光が放たれ、柔らかな金色の光が、アルベルトの体を包み込む。そして目の前にステータスが浮かび上がった。


<i947585|4583>


―――――――――

名前:アルベルト(勇者)

レベル:25

体力:320

攻撃:198

防御: 200

素早さ:175+22(Sペート効果中)

魔力: 95

賢さ: 80

運: 120

この世界で、勇者として産まれ勇者になるべくして勇者になった男

―――――――――


「アルベルトさんS(エス)ペート!の効果は10秒間だけです。」


魔人ゴーレムが巨大な拳で勇者アルベルトを叩き潰そうとする。


ドゴォオオオオン


周りの岩が砕け散り空に舞う。


しかしアルベルトは軽やかに風のように交わした。


「よっしゃー行くぜ岩野郎!」


アルベルトが白銀の剣をゴーレムに振るった・・・


カキーン!


しかし白銀の剣は厚い岩盤のような魔人ゴーレムの鱗ボディーにダメージ0で弾き返された。


「マーリンこいつヤバいわ。こいつ物理防御が高すぎて全然、俺の攻撃が効かんわ。あれっマーリン」


しかしマーリンはボス戦の戦場から突然、姿をけして、いなくなっていた。


そして俺は魔人ゴーレムに村人だと認識されたのか、運がいいためか。まったく攻撃をされなかった。

(ありがとう、シスターマリア。俺のステータスを見た魔人ゴーレムに全く敵だと認識されてないよ。)



その頃、山頂。


マーリンは空に浮遊しながら魔人ゴーレムと勇者たちの戦況を見下ろしていた。


(……ふふ、予想通りね。物理攻撃じゃあのゴーレムには傷一つつかない。とはいえ、今の勇者じゃ魔力が足りないわ……)


「反逆の戦士バルドルさん、魔人ゴーレムが勇者を倒してしまいそうだわ。残念だけど出番は、ないかも」


背後で声が響く。


反逆の戦士バルドルはキレた

「おぬし、わしの手柄を奪う気だな。横取りするなんて卑怯じゃないか。この泥棒猫、 コソ泥、お前のかーちゃん出べそ!」


とわめきたてていた。

まるで小学生だ。


「うるさいわね。この、へりくつクソじじい」


魅惑の黒魔術師マーリンと反逆の戦士バルドルは山頂で子供のような喧嘩をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る