第1章 誘拐の台所--Kidnapping Kitchen--

第1話 十二支を目指す旅へ

日本のどこかにあると言われている幻の国。その名も獣崎けだものざき

ここには数多あまたの動物たちが生息し、文明を築き上げた。


種の存続のため、殺人(ここでは動物を殺すという意味)などをした動物は獣崎を追放されるというシステムを持っており、ここ数百年、殺人が起きた事は一度も無い。


…あるイベントを除けば。


そのイベントとは、である。

12年間の王を決める大会で、元日に誰よりも早く、山の頂の神社に集まった12匹は、1年間ずつ、獣崎の王になれるのだ。つまり12年に一度だけ開催される。


このイベントはかなり大規模で、人間にも被害が加わるほどの戦いが起きた年もある。


そして、このイベント期間のみ、

どれだけ残虐な拷問をしようと、逆に手短にしようと、全ての殺人が許される。


前述の追放システムはこの大会で種を絶滅させないためのものである。絶滅さえしなければ、いくら殺人しても許されるのであった。


つまり、十二支とは、命懸けのイベントなのである。そんな大会、誰も参加しないかと思いきや、やはりかなり参加者が多い。


元日の朝に神社に着かなければならない。かといって着くのが早すぎると追い返され、遅すぎると失格となってしまう。


そして、神社までの道中が安全とは限らない。このイベントのみ殺戮しても良いという壁が、参加者の心を迷わす。


この大会は計画性と憶測、戦闘能力と運動能力、体力を駆使しなければ勝つどころか、生き残る事すら危うい、頭脳戦でもあるのだ。


だから、度々人里には、生き物を襲う練習や、敵から身を守る、隠れる、逃げる練習をするために来ている動物たちがいるのだ。








そして、その十二支は、今年、開催される!


カンガルーのルーは、缶詰や日持ちするお菓子などをポーチに詰めた。特に大好物の、は大量に詰め込んだ。


「ルー、本当に行くの?」

「うん」


彼の一族は長年、十二支を目指す者はいなかった。しかし、いつかイレギュラーな存在は来るもの。


「無理するなよ……」

「わかってる、今までありがとう。僕、王になってくるよ!」


「いってらっしゃい……」

「いってきます」


大晦日の夜、1人の戦士チャレンジャーが家を出発したようだ。


夜の森には、鬼が出るか蛇が出るか。

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