エリザベスはただ一人 ~扉を開けて用事は果たしたけど帰れなかったから転生らしい

チョコころね

第0話 始まりの話



 トレイのドアを開けたら異世界だった。

 

 いや私だって、もっと劇的な事件とか、美しいお花畑とか麗しい殿方の腕の中で、目覚めたかったわよ。

 でもそうだったから仕方ない。


 前世の私はトイレの個室が好きで、自宅のトイレは清潔に、尚且つ居心地良く整えていた。

 デパートやテーマパークに行った時も、トイレチェックは当然していて、一番居心地の良かったホテルのトイレを実現するのが夢だった。


 賃貸の自室トイレで手を洗い、


『壁やドアはマホガニーの飴色、便座も木製がいいなぁ……そう、こんな風に』


 そう思いながら、何故か木製になっているトイレのドアを開けたら、宮殿だったのだ。


 あわててドアを閉めたが、もうトイレの中も宮殿仕様だった。

 憧れのマホガニー壁には、優雅な彫刻が施されたランプが飾られ、仄明るい光を発している。

 ドアノブは真鍮だし、便座もいつか見た木製でツヤツヤだ。


 重厚な枠にはまった鏡に映ったのが、アニメのような波打つ金髪の美少女だったが、無視した。

 もう容量はいっぱいだった。

 広いと言ってもお手洗い、この中に自分以外はいない。

 私でなければ幽霊だ。怖い。


 ドアを開ければ宮殿、中も宮殿。


『夢だ、夢……』


 とうとう脳の許容量を供給量が上回ったのか、私は意識を手放した。


 そして、次に目が覚めた時には、豪華ホテルもここまでは……の天蓋付きのベッドの上で、心配そうなメイドさん達に見守られていた訳です……うあぁー。



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