はやての天魔
あんこロ。
第一話 魔導と武道
この世界は機械がファンタジー。魔法が
よく戦争に機械が扱われるが、ありゃあ嘘。
この世界での戦争は、異界より召喚された悪魔やわけもわからず命令に従う異界人がよく使われる。
もうわかっただろう?
この世界は、機械がファンタジー。
魔法が
ボクは
勉強は超超超出来る! これは本当。
ただし実技。これは微妙だ。
たとえ学力が学年トップでも、実技の方がからっきしだと退学にまで至るらしい。
「あ、渋堂。お前はもっと頑張らないと退学だからな」
……だなんて、普通真顔で教師が一生徒に対して言うか!?
しかもいまは2月だぞ!? 逆に嫌がらせかと勘繰ってしまうほどだ。
ちなみにボクのじいちゃんは武道家だ。
だけど、ボクにはその才能がなかったようだ。
まあ、子どもの頃から習うのをサボってたのもあるけど。
ここは魔導学校。
主に魔法を勉強するが、たまに武術も勉強する。
小中高一貫で、ボクは実技が毎度のことながら微妙だった。
だからこそ勉強をしまくってきたんだ! なのに退学。
…………この世は理不尽だ。
「どうして退学なんですか!?」
ボクは先生に問いかける。
「お前なぁ、固有魔法を使いこなせてなさすぎ」
「え?」
「戸籍には『加速』って書かれてるぞ。頭脳に使えばパニックになってショート。動作に使えば予備動作ができてなくてフリーズ。……将来どうすんの?」
「はあ……」
完全に図星で心がズキズキと痛む。
「幸い学力はトップなんだし、しばらく学校を休んでもいいから……その間に、おじいさんに武道を習いなさい。以上!」
「は、はい……」
そう。ボクの固有魔法は『加速』だ。
だが、加速すればするほどパニックになってしまう。当たり前だ。動きを頭の中であらかじめ作る。これが中々難しい。
ボクは『加速』を特別な力だと
故に、身体に負担のデカい使い方をして、いつも失敗する。
だからこそ、『加速』を使わないように生きてきた。勉強もたくさんして、せっかくトップになったっていうのに……結局は退学かよ。
「じいちゃんに頼むか。……イヤだけど」
そう呟いて職員室を後にすると、いつも張り合ってくる茶髪でポニーテールの女生徒、
「聞いたわよ! 退学するんですってね!」
「まだ決まってないっつーの」
「あなたがいないと張り合いがないの! 無様に退学にならないことね!」
「はいはい」
そのポニテ引きちぎってやろうか。言われなくてもやってやるよ。
ボクは家に帰ると、すぐさま武道場の方へと向かう。
「じいちゃん!」
「天魔か。事情は知っている。どうやら退学になりそうらしいな」
「うん。……だから、ボクを磨いてください! 師範!」
「その意気や良し。道着に着替えなさい」
「は、はい!」
◇◇◇
「よろしくお願いします!」
「うむ。いままでサボってきたツケだな。渋堂一族はその昔、戦争で活躍して有名になり、いまも一流の武道家として名を馳せている。いまじゃ珍しい家系だ」
「たしか、ご先祖さまが歴代で最初の『加速』使い……だったよね?」
「そうだ。頭の動きを『加速』させ、身体能力を『加速』させた。だが、それだけじゃない。
「へぇ……」
「ま、いまのは忘れてくれ。ふとした時に思い出してくれればいい」
「はい!」
「じゃあまずは基本から」
「押忍!」
「ただし、『加速』を使いながらやれ」
「お、押忍!」
こうして、常人の倍の効率で、尚且つ『加速』の使い方にも慣れるように特訓する。
◇◇◇
「2キロ走ってきたようだな」
「お、押忍……」
「『加速』は常人の倍の体力を使う。よって、体力づくりが大事なんだ。ひと通り終わったら、もうひとっ走りな。」
「うえ~……」
「あと、ワシが教えるのは武術ではない」
「えっ? そうなの?」
「ああ。ワシは予備動作を主に教えている。すべては『加速』のためにだ」
「なるほど」
「常に頭の中で動作が流れるイメージで行動するんだ。例えば、『殴る』なら、腕を構えて、腕を引いて、腕を前に伸ばす。それが『殴る』という行為だ。はじめはゆっくりでいい。やってみろ」
「お、押忍!」
頭なら結構いいんだ! きっと上手くいくはず……!
えーと、腕を構えて、引いてから、前に……!
「打つ!」
「そうだ。突きは拳を打つイメージでやれ。それを連続でやるんだ」
「所謂、反復動作ってやつ?」
「そうだ。身体に染み込ませる事で、イメージしやすくなる」
「なるほど……」
こうして、もう一走りした後に、一日目は終わった。
◇◇◇
「起きろ! 走れ!」
「は、はい!」
まだ5時だってのに……! やれやれ、武道家の朝は早いってか。
二日目は実践訓練だ。
「ヒュー……ヒュー……」
「5キロ走ってきたようだな。『加速』を使って」
「お、押忍……」
「そういう簡単な動きを『加速』で身体に叩き込め。今日は実践だ」
「実践?」
「ワシの動きを真似ろ」
「押忍!」
じいちゃんは右拳を突き出し、今度は左拳を突き出したあと、空中を右脚で蹴りあげた。
ただ身体を動かしただけなのに、もの凄い力強さを感じた。
「やってみろ」
「はい!」
右! 左! 蹴り!!
「どうかな?」
「まずまずだな」
「はあ……」
「ならつぎは、『加速』を使ってやれ。3回分な」
「えっ!?」
「こういう簡単な動きを身体に覚えさせるのが大事なんだ」
「お、押忍!」
右左脚! 右左脚! 右左……
「違う! 動きが雑だ! 右! 左! 脚! この順で丁寧にやれ!! 最初だし、遅くても構わん!」
「お、押忍!」
【加速】!
右拳を出してから左拳! 左拳を出してから右脚! 右脚を蹴り上げるときはなるべく高く!
よし、イメージ完了!
右、左、右脚!
「もう一度!」
右、左、右脚!
「もう一度!」
右、左、右脚!
「で、できた!」
「うむ。悪くなかったぞ。事前に動きをリピートさせろ。どう動くのか、頭の中で決めておくんだ」
「は、はい!」
「これで極意は教えた。あとはお前次第だ」
「えっ? もう終わり?」
「ああ。格闘ゲームのコンボみたいな動きだとか、教えられる事はまだまだいくらでもある。だが、いまのお前にはまだ早い。まずは基礎をしっかりと身体に定着させろ」
「で、でも……」
「なら課題だ。常に『加速』を使い続けろ」
「常に……?」
「天魔、お前の魔力量は?」
「3500。張り合ってくるやつは15000」
「それだけありゃあ十分だな。一日中使えるはずだ。魔力消費が少ないのが、『加速』の利点だからな」
「はあ……」
「じゃあ、学校行ってこい」
「えっ?」
「修行はもう始まっている」
「わ、わかった! 行ってくるね!」
「『加速』を常に使うの、忘れるなよ!」
「うん!」
◇◇◇
右足のつぎは左! 左足のつぎは右!
そんなことを考えながら走っていると、いつの間にか魔導学校に着いていた。
「……そうか! 雑念を消せば早く着くし疲れないのか!」
でも、まだ7時だしなぁ……。
とりあえず、教室に行ってみるか……? だれもいないだろうけど。
「右のつぎは左……左のつぎは右……」
「あら? 渋堂くん。早いのね」
その声は……と思い振り向くと、見慣れた茶髪のポニーテールの女、天堂魔奈がいた。
「なんだ天堂か」
「黒髪で学ランを着てるのって、あなたくらいよね」
「そっちこそ、茶髪のポニーテールで胸がないのは天堂くらいだよな」
暇だからこいつと手合わせでもするか。そう思ったので、ボクは挑発してみる。
「は?」
「なんだ? やるか?」
「いいわよ。体育館に来なさい」
「おう。特訓の成果を見せてやる」
こうして、天堂と戦うことになった。
でも、こいつの固有魔法は強い。勝つのは無理だろうけど……勝つ
◇◇◇
体育館に移ると、さすがに朝早いせいか誰もいなかった。
ボクは体育館内を見渡すフリをして天堂との間合いを取る。
「ほら、来なさい!」
「だれが行くかよ!」
「ふっ! 【引力】!」
天堂が杖を上に振ると、ボクは彼女の方へと
「くっ……!」
「さてと、いくわよ!」
天堂が拳を構える。
「あれを喰らったらまずいな……。【加速】!」
「えっ?」
天堂は左拳を前に突き出した。
もちろんボクの仕業だ。天堂の思考と動作を加速させた。
これで引力は途中で途切れるはず!
「な、どうして……」
「隙あり! 【加速】!」
引き寄せられてる間に頭を『加速』させて考えろ!
両足で着地! そのあとすぐに、左脚で顔面を蹴りあげるイメージ!
「な、何? 渋堂くんの動きが、いつもと違う……!」
「はぁっ!」
イメージ通りに左脚で蹴り上げる。
だが、
「せっ、【斥力】!」
ボクの左脚が繰り出されると同時に、天堂が杖を下に振りボクは
「危なかった……!」
「くっ、惜しかった……!」
くそっ! もっと速くならないと!
「でも、これ以上は動きを作れないし……」
「【引力】!」
「くっそおおおおおおおお!!」
このまま負けるのかよ……! ボクは!
「【斥力】……」
「えっ?」
天堂は、『引力』を『斥力』で打ち消した。
「やるようになったわね! 昨日までの渋堂くんとは違った! まるで別人だった!」
「でも、勝てなかった……」
「そりゃあ全生徒の中でもトップ10に入る生徒に、昨日今日でいきなり勝てるわけないでしょ。あなたのお兄さんならわからないけど」
「くそ……」
「でも一言だけアドバイス」
「な、何だよ」
「渋堂くんのおじいさんのところには、一度だけ護身術を習いに訪れたことがあるの」
「ブルジョワエリートが……」
「話は最後まで聞きなさい! ていうか、あなたの家もブルジョワでしょうが」
「あ、たしかに」
「一人きりで、自主練中だったのかは定かではないけれど、見えない速度で武術を行ってたわ」
「見えない速度?」
「ええ。帰ったら直接尋ねてみるといいわ」
「おう。ありがとう」
「ライバルなんだし、もっと強くなってよね」
「それは天堂が勝手に言ってるだけだろ」
「そうだけど? だって、他に競う相手がいないんだもの」
鼻につくような事を簡単に言いやがる。
「わかったよ。またいつか戦おう」
「うん!」
こうして、天堂と仲良くなった……のか?
「あとこれもアドバイス! いまの渋堂くんなら、思考を『加速』させても大丈夫なんじゃない? もちろん、戦闘時限定でだけど」
「お、おう」
「じゃあそろそろみんな来る頃だろうから、教室に戻りましょう」
「ああ」
こうしてボクは、『加速』を使いながら学校を過ごした。
ただ、じいちゃんに速度の話をすることに頭がいっぱいで、授業はあまり集中できなかった。
いつもよりは、実技の点数がよかったけど。
そして、放課後を迎える。
……と同時に、先生に呼び出された。
「渋堂!」
「はい?」
「……よくやったな。今日は実技よかったぞ。この点数を維持できれば、退学は免れるだろう」
「あ、ありがとうございます!」
「そんだけだ。じゃ、気をつけて帰れよ」
「はい!」
ボクは『加速』を使って下校し、武道場の方へと向かった。
◇◇◇
「じいちゃん!」
「なんだ、天魔?」
「じいちゃんはもっと速く動けるって本当!?」
「なんだそれは?」
「天堂に聞いた! 見えない速度で武術をやってたって」
「はぁ……お前にはまだ早いと思ったんだがな」
「あるんだね? もっと速くなる方法が!」
「ああ。『変速』だ。ワシが編み出した技術でな、1速から10速まである」
「『変速』……」
「ただ、年々身体がついていかなくなってな。3年前に封印した技術だ」
「教えてください! 『引力』と『斥力』に勝つには、速さが必要なんだ!」
「『引力』と『斥力』……? あぁ、あの娘か」
「知ってるの!?」
「ああ。かなり目立ってたからな。……ライバルか?」
「うん! 勝ちたい!」
「なら教えてやるよ。『変速』を」
「うん!」
というわけで、じいちゃんから『変速』を教えてもらえるようになった。
どういう技術なのか、楽しみだ。
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