ただ一つの空間で起こるその風景が、ありありと浮かぶ作品。静かな空間、刺繍の音、そして日常の気配。さらには、二人の普段のかかわり方までもが滲み出てくるような、そんな作品です。なにより、からかわれている姿や、からかっている姿。その二人の交わりが、思わずこちらまでドキドキしてくるようで、読んでよかったと思うほどの実力に満ちてます。単品でも楽しめるいい作品でした。
この作品は「事件」や「展開」で引っ張るのではなく、•手仕事のリズム•恋人同士の距離感•仕事と私情の境界線そういった生活の中の親密さを、徹底的に大切にして描いているのが魅力だと思いました。派手なことは何も起きていないのに、最後まで“満たされる”感覚が途切れない。読み終えたあと、「この二人、今日も明日もこんな感じなんだろうな」と自然に思えるのが、何よりの成功だと思います。とても素敵でした。