第16話 面接! 新キャラ!
そんな事があってから数日後、無理矢理にでも有給を取った兄と一緒にファミレスへ。
わぁ、外食とか久しぶりだぁ。
とか普通の事を考えられている内は良かったのだが。
「初めまして、夢月の兄です」
「は、初めまして……えと、
こんな訳の分からないイベントだというのに、ちゃんと来てくれた黒沢君には感謝しかない。
というか本当に意味が分からないよね。
ゲームに誘っただけなのに、家族と面談するとか。
もはや気まずいとかそういうレベルではなく、恥ずかしいのもあって表情が引き攣りまくっていたが……とにかく、私も喋らないと。
仲介役として頑張ろう、そう思ったのが間違いだったのだろう。
「……初めまして、白川 夢月です」
「「え?」」
「ごめんなさい、間違えました」
違う、そうじゃない。
気を取り直してからファミレスのメニューを相手に差し出し。
「何でも奢るので、本当に好きに頼んじゃってくださいお願いします……本日は大変申し訳ありませんでしたぁ……」
「い、いやちょっと!? 白川さん!?」
思い切り深々と頭を下げてみれば、黒沢君は物凄く慌てたご様子。
とはいえ、これくらいはやらせて下さい。
ガンサバのお給料も入ったし、懐は大丈夫なので。
本当に何でも食べて下さい。
フードファイトしていただいても大丈夫です、ちゃんとお金下ろして来たので。
そんな事を考えつつも、ズイズイと相手にメニューを差し出してみたのだが。
「もしかして、なんだが……まさか普段から妹に奢らせてる……とか、無いよな?」
「絶対にありません! 色んな物に誓って有り得ません! 白川さんと学校外で会ったのも初めてです!」
別の方向で兄に勘違いされてしまい、黒沢君と共に何かもうとにかく慌ててしまった。
だって何でか、兄が見た事無い顔をしているんだもの。
笑っているけど、妙にピキピキピキッて音がしそうな、物凄く怖い顔をしているのだ。
その結果。
「お、お兄ちゃん! 私が他の人とご飯行ける程コミュ力あると思ってる!? クラスメイトと“外食”した経験なんて、小学の林間学校が最後だよ!」
思わず、そう口に出してしまった。
あ、でも……外でご飯食べたって意味でそう言ったけど、普通外食って言ったらお店か。
などと、また言葉を間違えた事に赤くなっていれば。
今度は男性陣二人が、物凄い勢いでコッチを振り返ってから。
「なんか、なんかごめんな? もっと休みを取るから、俺と一緒に外食しよう。そうしよう、な? これまでも、もっといっぱい外に連れ出してやれば良かった……」
「し、白川さん! そ、その……俺で良ければ、そういうのいくらでも付き合うから! 女子だけだとラーメン屋とか入り辛いって言うし、いくらでも理由付けに使ってくれて良いから! だからその……元気出して! あと奢らなくて良いからね!?」
二人から、妙に憐れみを含んだ瞳を向けられてしまうのであった。
あの、ですね。
私、もう帰っていいですか?
心が、痛いです。
◆
「本当に……今日は、すみませんでした……というか、来てくれて本当にありがとうございました」
『あの、えっと……こちらこそ? でも、俺は楽しかったよ? 白川さんと喋った事って、全然無かったし。それにお兄さんも、話し始めたら凄く面白い人だったし』
その日の夜、黒沢君と通話を繋ぎながらいつも通りゲームを起動していた。
ファミレスの件は……もう、忘れる事にしよう。
私のあまりにも酷いぼっち宣言の後、二人は完全にフォローする体勢に入ってしまったのだ。
今度の休みにはあっちに行ってみよう、こういうのって食べた事あるか? みたいな。
しかも黒沢君まで巻き込んだ状態で、お互いフォローしながら話を進めていく的な。
そのお陰か、お兄ちゃんと黒沢君はそれなりに仲良くなったように見えたのだけども……凄いなぁ、コミュ力ある人達は。
私だったら、あの状況でも話を合わせられる気がしない。
というか実際私は、終始無言に近い状態に陥ってしまったし。
首を色んな方向に振って返事をしていたくらいだ。
結局のところあまりにも酷い友好関係を暴露してしまい、恥ずか死ってヤツを経験しそうになっていた感はあるのだが。
でも実際、中学頃から完全ソロ活動が始まってしまったので。
外食とか、ほとんど行った事ないんだよね。
ファーストフードだって、お兄ちゃんに初めて連れて行ってもらって感動したくらいだし。
基本、自分で作ってます。
食費は兄に出して貰っているので、偉くも何ともないけど。
『でも意外だったなぁ……白川さん、お兄さんとは結構喋るんだね? その、学校では凄く静かだから』
「お、お恥ずかしい限りです……」
『い、いやいやいや! こっちとしては嬉しいというか、男子とは喋りたくないってタイプなのかと思ってたというか。むしろ俺も女子と喋るの全然慣れてないので……コミュ障のオタク男子だけど、今後ともどうぞよろしくです……』
それこそイヤイヤイヤと言いたくなる。
だって他の家のご家族に呼び出されて、実際に来てくれたし。
初対面の筈のお兄ちゃんとだって、最後はガンサバの話で凄く盛り上がっていたし。
私からすれば、立派な陽キャと言いますか……コミュ力凄いなぁって感心してばかりだったのだが。
とはいえ、そんな事ばかり喋っていてもゲームが進まない。
せっかく兄からも新キャラ作成の許可を頂いたのだ、早速やってみないと時間が勿体ないではないか。
「え、と……新規キャラクター作成で。えぇと……」
『分かんない事あったら聞いてね? 時間掛けちゃって問題無いから』
通話を繋いだ向こう側からは、何だかワクワクした様な声が聞えて来るけども。
今日二人が話している所を見て、ちゃんと分かった。
黒沢君は、本気でこのゲームが好きなんだろうなって。
ゲームに興味を持ってくれた人は、お試しでも良いから絶対プレイしてみて欲しい! とかお兄ちゃんに語っていたし。
制作側としては凄く嬉しい言葉だったのか、兄もずっとニヤニヤ。
その熱量のまま語ってくれた結果、こっちの保護者から新規プレイの許可を捥ぎ取った程なのだ。
「あ、あんまり時間掛けちゃっても……申し訳ないので。素のまま人物データを投影してから、ちょっと雰囲気とか……変えれば、良いかなって……」
流石に今回は、男性キャラにするのは恥ずかし過ぎる。
リアルでも知っている人なのに、そういうプレイスタイルだって思われるのはちょっと……というのと。
いざ私がまた男性キャラを作ったら、絶対“6key”と似た感じになる。
それだけは避けないと。
『あ、あのっ! 余計なお世話かもしれないけど……変に意識しないで、好きに外見変えちゃって良いんだからね? 全然違うからって笑ったりしないし、むしろリアルの外見を投影して、かなり似通っちゃった方が危ないっていうか……とにかく! ホント時間気にせず好きに外見弄っちゃって!?』
なんか、凄く気を使われてしまった。
でもそうだよね。
VR機器を使う際に、身体情報は入力しているし。
顔に関してだって、ゴーグルからのスキャンで本当に“そのまま”を投影出来るのだ。
こればっかりは、イジらないと不味い。
素顔を晒してゲームなど出来る筈がない、というのと……やばい、今の内に表情トレースの数字もデフォルトに戻しておかないと。
誰かと一緒にゲームをするのに、ずっと無表情なのはまずいよね。
などと弄り回していれば、キャラごとに設定変更が可能な様で。
迷わずそこをタップし、“6key”の方には反映しない様に設定しておいた。
「と、とにかくすぐ終わらせます! 合流しないと、何も始まらないし!」
『う、うん……けどホント、時間とか気にしなくて良いからね? 外見と声、それからプレイヤーネームは、なるべく本人って分からない様にしてもらった方が安心……かな?』
どうにも相手は、私がガチのネトゲ初心者だと勘違いしている様で、とても丁寧に教えてくれる。
けどまぁ、そうか。
今回お兄ちゃんが登場したのだって、そういう意味も含めて心配されていると認識されてもおかしくない行動だったかも。
とはいえ、実は結構やってまーす! なんて言う必要は無いし、そもそもネトゲでもソロだし。
なので、余計な事は言わない様にしながらキャラクターを作っていたのだが……。
「ど、どういうのが良いんだろう……」
ヤバイ、改めて女の子のキャラクターを作ろうとしても、全然分からない。
物凄く強そうな見た目にする? いやでも、街中で歩いていたNPC……結構普通の人多かったしなぁ。
それに度々というか、結構な割合で美人さんを見掛けている気がする。
更に言うなら、これまで見かけた女性アバターのプレイヤーに関しては、皆“超”が付く程可愛かったり綺麗に作っていたし……。
『えぇと……余計なお世話かもしれないけど、目つきと口元。あとは髪型とか? そういうのを少し変えるだけでも、結構本人とは結び付かなくなるものだから。本当に迷ったらランダムクリエイトか、本人を投影した後のお任せカスタムみたいなのも――』
「そ、それにします! すみません時間掛かっちゃって!」
という事で、迷わず投影後お任せカスタムのボタンをタップ。
すると私そのまんまだったアバターが、微妙に変化を遂げていた。
自分からすると……普通に似てそうな気もするけど。
でも目とか普段よりパッチリしてるし、顔立ちもちょっと違う……気がする?
あとは、何と言っても弱そう。
身長はあんまり変わらないので小さいし、自信無さそうな顔しているし。
よし、これにしよう。
今私が気にするべきは、自身と近いかどうかではない。
いかに“6key”とイメージを離せるかの方が大事だ、多分。
バレると、本気で不味いので。
という事で、そのままキャラクターを設定してからボイスも適当に弄って終了。
テストボイスを聞いてみた感じでは、特に変な声じゃないし、いいよね?
「あとは名前、名前……」
どうしよう、本名をもじった感じのは前に使っちゃったしなぁ……なんて、悩んでいると。
『こっちは“
これまた、黒沢君から助け船を出して貰った。
なるほど、苗字の方が周囲からも分かり辛いか。
だったら私もそっちにしてみよう。
白川なんて珍しい苗字じゃないし、別に問題無いでしょう。
という事で。
「しらかわ……いや、シロの方がいいのかな。
『ちょ、えっ!? 白川さん!?』
「へ?」
何やら慌てた様な声が聞こえた気がしたけど、既に決定ボタンはタップしてしまった。
そんな訳で、私の新たなるガンサバイブオンラインが幕を上げるのであった――
私、何かやらかした? え、何もしてないよね?
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