ロマンスのコタツ

せおぽん

ロマンスのコタツ

彼女は僕の肩に頭を寄せ、僕の手のひらを取りスリスリと撫でている。彼女の手は少し冷たい。柔らかい手が僕の手で暖をとろうとしていると思うと、嬉しくなる。


狭いアパートの一室。19インチのモニター。サブスクで見る昔の洋画。炬燵の上には片付けの終わっていない鍋。ロマンスのかけらもないシチュエーションだ。


だが、コタツに並んで座る二人は、最高にロマンチックに満たされている。


「映画、つまらなくなかった?」と僕は鍋を片付けながら尋ねる。


「つまらなくはないけれど、わかんないな。好きなら別れる必要なくない?」


その通りだ。僕もそう思う。しかし――。


片付けを軽く済ませ、彼女の隣に座り直すと、彼女が唇を突き出した。僕はその唇を指でそっと摘む。


「もう一本映画を見よう」と僕は言い、再生ボタンを押す。


「キスというのはだね……もっと尊重すべ…」


僕の講釈は途中で遮られた。彼女が僕の唇を塞いだからだ。


19インチの小さなモニターで、素敵なロマンス映画が流れ出す。


コタツの上にあったミカンが、ころんと転がった。


ロマンス映画をBGMに、同じ部屋でロマンスがもうひとつ、コタツを舞台にして静かに、ゆっくりと始まろうとしている。

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