ほしわた氏の作品の中で最もシリアスな一篇で、ジャンルとしてはダークファンタジーに近いが、核心にあるのは「正義の問い」だ。
「魔王は悪だ。それだけだろ」というレオンの一言が、物語全体の起点になっている。疑うことなく剣を振るってきた少年が、データと現実の齟齬を突きつけられ、孤児院を守る少女に剣を向け、そして盗んだ旗で暴れる偽の魔王軍を目の前にして崩れていく——この流れが5200字の中で無駄なく組み立てられている。
バルドの「事実だ。守った。それは消えねえ」という一言が物語の転換点として機能していて、感情的に動くレオンへの揺さぶりとして誰より効いている。
エルナが最初から「命令と現実が噛み合っていない」と言い続けていたことが、最後に回収される構造も丁寧だ。旗が地面に落ち、土に汚れて、レオンが「俺たちの敵は、誰なんだ」と呟く——この問いに答えは出ない。出さないことが正しい。
完結済み1話・5200字。ほしわた氏の多彩な短編群の中で、最も重たい問いを残す一作だ。