ピクセル・ファータム:記憶と時間の迷宮

シラル

プロローグ

この物語は、アーケードゲームの世界に突然入り込んだ男が、自らの記憶や感情、過去と向き合っていく心理的アドベンチャーです。


本作はフィクションであり、実在の人物・団体・ゲーム等とは一切関係ありません。


天草レンは、頭の中に付箋を貼りまくっているような男だった。


彼はネットワーク企業のイノベーション部長。

毎日が通知音と無意味な会議の交響曲で終わる。頭の中には常に三十以上の思考タブが開いたままだ。


そんな混沌の中に、一つだけ嘘をつかない機械があった。

それは、子どもの頃に通っていたゲームセンター「ネオピクセル・パラダイス」の筐体だった。


レンは週に一度だけ、自分にその時間を許していた。

1993年製のゲーム「ディメンショナル・ターボハリネズミ」にコインを入れる。

名前のない青い動物が時のラインを走り、メタルなクローンを倒し、バグのような姫を救う。


その夜、第一ラウンド第二ステージで自己ベストを更新した瞬間、画面が点滅した。

電気的な唸りのあと、闇が訪れる。そして――終わりのない落下。


目を覚ますと、そこは東京ではなかった。1995年でもなかった。


彼は、ゲームの中にいた。

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