第5話 穢れた王
王都の城下は酷い有様だった。
開戦中とはいえ、あまりに人の気配がない。
長く使われていない民家が頻繁に見られ、大通りには商いをしている様子すらない。
敵の兵士は抗戦意欲もないのか、武器を下ろし座り込んでいる。
「なんという……」
『アストレイアは本当に立派な国ですね。街が賑やかで、とても明るい』
社交会の前夜にルシエルが言っていたことに合点がいく。
夜に見下ろすこの城下は、一体どれほど暗いのだろうか。
「ジスラン様、王城の者達が降伏をしたいとのこと。如何されますか?」
『必ず僕の国を滅ぼして』
ルシエルの声が頭に響く。
「受け入れん。城に攻め入り、全員殺すぞ」
◇
ジスランは先陣を切って王城に攻め込んだ。
「使用人や女は殺すな、貴族と思われる者達は殺して構わん」
ジスランは命令を下すと剣を引き抜き、豪華な服に身を包んだ男を首に剣を突き立てる。
目についた官吏や貴族達を片っ端から切り伏せていく。
全員、人の形をした何かにしか見えなかった。
絢爛な王城が血に染まっていく。
「豚も人間と同じ赤い血であったな」
ジスランの前には、社交界でルシエルを諌めていた宰相が怯えた顔で命乞いをしていた。
「お、お願いします!命だけは!」
ジスランは剣を振りかぶる。
「民も、同じことを言わなかったか?……それとも豚には民の言葉が聞こえないのか?」
「ひ、や、やめ……」
剣を振り下ろし、宰相の首を斬り落とした。
◇
ジスランは謁見の間で玉座に座るレクイエス王の前に来ていた。
王はビクビクと体を震わせ、忙しなく視線を動かしている。
「レクイエス王とお見受けいたす。此度の戦、アストレイアの勝利は確実。投降されよ」
王はその言葉を理解していないのか、誰かを探すかのように視線を彷徨わせている。
「レクイエス王、聞いておられるか」
「宰相は、どこにいる?」
「宰相は私が殺した。大人しく投降されよ」
レクイエス王はジスランの言葉を聞くと、途端にパニックになる。
「こ、ころした?何故殺したのだ?このままでは何も決められないではないか、それに公爵や伯爵はどこにいる?いつも私に助言してくれる者達は?」
「そうやって愚かな貴族達の傀儡に成り果て、政を蔑ろにしていたのだな」
ジスランは血に濡れた剣を握り直し、玉座に向かって一歩一歩足を進める。
「民がどんな暮らしをしているか、知っているか」
王は首を振る。
「この国の貴族が重税を課し、私欲のままに生きていたことを知っているか」
王はもう一度首を振る。
「ルシエルが、どんな目に遭っていたか知っているか」
「そんな話、聞いていない」
「そうだろうな、お前が愚鈍だったからこそ、ルシエルは自身を犠牲にする方法しか選べなかったのだ」
ジスランは奥歯を割れそうなほど強く噛み締める。
「あまつさえ、息子であるルシエルさえお前は殺した」
王の前まで行くと、ジスランは剣を振りかぶる。
「今宵で、レクイエスの血は絶える」
ジスランが剣を薙ぐと、赤い血が玉座を汚す。
王が事切れるのを見届けると、天を見上げ、小さく呟く。
「ルシエル、お前の望みは叶えたぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます