異世界勇車ブレイブカイザー
シュガースプーン。
第1話 相棒の名は《カイザー》
俺の名前は
休みの日には愛車のスーパーカーを洗車してからドライブするのがお決まりで、今日も朝からピカピカに洗車した後にドライブに出た。
気分的に海の方へ向かい、昼飯にしらす丼を食べて帰宅する。そんななんでもないけど少し特別な休日を過ごす予定だった。
そのはずだったのに……
「いったい、ここは何処なんだよ!」
俺は道路も建物もなにも見当たらない大平原の真ん中でそう叫んだ。
俺はついさっきまで高速道路を走っていたはずである。
最後に覚えているのはトンネルを走っている途中、トンネルの奥は黒い煙のようなモヤでいっぱいになっていた。
事故かと思った俺はハザードランプをつけてゆっくりと車を停車させた。
すると今まで前方を漂っていたモヤは、ただの煙とは思えないスピードで、まるで意志を持ったように車ごと俺を包み込み、そこで俺は気を失ってしまったんだ。
そして気がついた時には今の状況。大平原の中に俺と愛車のスーパーカーのみ。
訳も分からず車から降りた俺は、途方に暮れながら叫んだのであった。
『オーナー、とりあえず落ち着いてください』
「だ、誰だ!」
俺は今この大平原に1人のはずだ。突然聞こえた声に、俺は警戒しながら辺りを見回してみるが、やはり人影は見当たらない。
『オーナー、私です。こっちです』
「こっちって、まさか……」
再び聞こえた声に、俺が声のした方を振り向くと、ありえないことだがまさかの存在にたどり着く。
「喋ってるのってお前なのか?」
先ほどから俺に話しかけていたのは、俺の愛車のスーパーカーだったのだ。
『はい。どうやらここは異世界のようで、私には自我が与えられたのだと言っていました』
「言っていましたって、誰が?」
色々とツッコミたいことはあるが、愛車にこの説明をした人物が気になった。
異世界というワードから、なんとなく想像はできる。しかし、確信がもてる言葉が聞きたかった。
『神様です』
「神様! お前、神様と話したのか」
想像通りの人物に胸が高鳴る。現実には起こり得ないような事であるが、現実は小説より奇なりという。
「うん、痛い。それで、神様はなんて言ってたんだ? 俺のことは何か言ってなかったか?」
俺は夢でない事を確かめるように強く頬をつねりながら、期待のこもった声で気になる続きを尋ねる。
『はい、私は勇者としてこの世界に呼ばれたのだそうです。オーナーのことは特に何も言ってませんでした』
「勇者はお前なのかよ!」
期待した答えの斜め上の答えを聞いて、俺は勢いよくツッコミを入れてしまった。
『はい。無限のエネルギーや丈夫な体を頂きました。ステータスで確認できるみたいですよ』
「ステータス!」
『はい。ナビに映しますので確認してください』
俺のツッコミを気にしていない愛車に言われるがまま、俺は車に乗り込むと、センターコンソールにある大きなモニターをみる。
するとナビ画面が勝手に操作されてゲームで見るようなステータスが表示された。
【スキル:勇者・変形・燃料無限・アダマンタイトボディ】
攻撃力などが表示されるものではないが、そこには確かに愛車が貰ったであろうスキルが表示されている。
「俺もステータスの確認はできるのかな?」
俺はまだ期待を捨ててはいなかった。こう見えても30を越えても漫画やアニメを見るくらいにはオタクだ。巻き込まれた奴が実は最強! なんてモノも色々と見てきた。
『オーナーはスマホで確認できませんか?』
愛車に言われるがまま、俺が自分のスマホをいじると、見たことがないアプリが追加されている。
【ステータス】アイコンの下にそう書かれたアプリは、先ほど愛車が立ち上げたモノと同じであった。
「よし、それじゃ見るぞ——」
俺は期待に胸を高鳴らせ、アプリを立ち上げる。
【轟ソラ・スキル:なし】
「あ……」
アプリに表示されたのは、これまでの期待を打ち砕く文字であった。
物語のようにはいかないのが現実である。いや、怒っている事は十分に
『だ、大丈夫です! 私がオーナーを守りますから!』
ステータスを見て肩を落とした俺に、愛車がそう言ってくれる。
『オーナーが子供の頃に見ていたアニメも勇者と何も持たない少年が共に悪を倒す話だったじゃないですか! 私は戦い方は何も分かりません。オーナーの力が必要なんです!』
愛車は昔話を持ち出して俺を慰めてくれた。ずいぶん昔の話に、俺は苦笑してしまった。
「お前、良く覚えてるな。そんな昔のこと」
『はい。オーナーがまだ助手席に乗っていた頃の話です』
この車は亡くなった祖父から譲り受けたものだ。子供の頃、送り迎えをしてもらう時に見ていたアニメの内容。
その時、祖父が言っていた言葉をふと思い出した。
[ソラ、勇者に必要なのは強い力じゃなくて——]
「そうだな! 俺たちもあのアニメのように2人で世界を救うぞ!」
『はい! オーナー!』
俺の言葉に元気よく返事をする愛車に俺はちょっと待ったとばかりに手を広げる。
「違う。俺はお前の所有者でなく相棒だ。だからオーナーではなく名前で呼ぶんだ!」
『はい! ソラ!』
俺の名前を呼ぶ愛車の声色が嬉しそうに変化した事に俺は口角を上げた。
「俺もお前を名前で呼ばないとな。神様に名前はもらったのか?」
『いえ、貰っていません。だからソラがつけてください』
愛車にそう言われ、腕を組みながら俺は相棒の名前を一生懸命考える。
「よし、カイザーだ! 皇帝と呼ばれた車のお前にピッタリだろ?」
『はい、ソラ! 私の名前はカイザーです!』
カイザーはもらった名前を嬉しそうに復唱した。
「ところでさ、スキルに変形ってあったけど——」
名付けも終わったところで、俺は気になっていたカイザーのスキルについて質問しようとする。
『はい! 変形して見せますね、ロボットに!』
話の途中で意気揚々と変形をしたカイザーを見上げ、俺はスキルの話の時の何倍も心をときめかせた。
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