水子
@hudoturugi
第1話
「お姉ちゃん、助けて…」
水たまりの中に女の子の赤ちゃんがいる。
急いで引き上げた。
青白く寒そうだ。
抱っこすると、微笑んだ。
裸なので、私の白いブランケットで包んだ。
大丈夫なのかな。
赤ちゃんは、私に向かって
「お姉ちゃん、ありがとう。」
「私のことお姉ちゃんって呼ぶけど、私には妹はいないんだけど…」
「あなたは、私のお姉ちゃんです。ほら、お母さんがあそこにいるでしょ。」
と、赤ちゃんは言った。
確かに、お母さんがいる。
私の母は俳優で、今も現役である。
今はドラマの撮影の休憩中のようだ。
私は、赤ちゃんを抱っこして、母に近寄る。
「お母さん、この赤ちゃん、私の妹なの?」
「そうよ。あなたの妹よ。」
「いつ産まれたの?全然聞いてないんだけど。」
「…。」
母は、けげんな顔をする。
「お母さん、赤ちゃん抱っこしてあげて…。」
母は、赤ちゃんを見ようともせず
「今、リハーサル中だから」と言って
その場を去っていきました。
“え?どうして?自分の娘じゃないの?”
私も自分の子が、息子たちがいるけど。
そんな。
ひどいと思うけど、そういう人なんだなぁと、改めて思う。
私のことも、育てられないといって、叔母へ預けた。
この赤ちゃんもそうなのかな?
息子たちが私を呼ぶので「ちょっと待って…」と私があたふたしていると
赤ちゃんは
「お姉ちゃん、もういいよ。私は、自分のいるべき所へ帰るから…」と言うと
私のブランケットを羽織って、赤ちゃんは這って、水溜まりの方へ行くので、私は
「ダメ!そっちに行っちゃダメだよ!」と追いかけるが
赤ちゃんは、水溜まりに沈んでいった…
私はハッとして
気付いたらうたた寝をしていた。
夢だったのか。
それにしては鮮明で。
かわいそうな赤ちゃん。
赤ちゃんは妹なのか?
赤ちゃんがいるべき所って
どこに行ってしまったんだろう。
お母さんに会いに行って、聞いてみようか。
会ってくれるかな。
電話をかけてみた。
出なかった。
昼休みが終わっちゃうから
仕事に戻らなければ。
佐奈恵は、大手の珈琲店に勤めている。
夫は、その珈琲店のオーナーをしている。
5歳と3歳の息子がいる。
息子たちは、今、保育園にいて
これから、また午後の仕事。
高校までは、母の妹、叔母に育ててもらった。
叔母の
私のことお姉ちゃんと呼ぶあの赤ちゃん。
気になっている。
やっぱり、お母さんの所へ行こうかな。
お母さん、どうしているだろう。
今日は、子供たちの保育園のお迎えは、夫の
インターホンを押すが、やっぱり出ない…。
「お母さん、私だよ。佐奈恵だよ。」
応答ない。
「お母さん、久しぶりに来たから、開けてよ…。」
応答ない。
いないのかな。
居留守かな…。
ガチャっと
ドアが開いた。
母は、
「珍しいね。」と言った。
お母さん、今日、休みかな。
パジャマみたいな恰好だけど。
髪もボサボサだし。
寝起きですか。
「お母さんに聞きたいことがあって来たんだけど」
めずらしく
家に入れてくれた。
すごい部屋だな。
洗い物はたまっているし、洗濯物も山のようだよ。
缶は、お酒かな…。
「お母さん、部屋がすごいことになっているけど、大丈夫なの?」
母は、
「マネージャーさんがしばらく来てないから、大変なことになっているだけよ。」
「マネージャーさんは、家政婦さんじゃないでしょ…」
「…。」
ドラマの中では、完璧な人だけど
家事は何にもできないんだよね。
マネージャーさんも大変だな。
「お母さん、唐突なんだけど
私には妹がいるなかな?」
「いないでしょ。」
やっぱり。
じゃあ、ただの夢だったのか。
母のマンションを後にする。
なんかね。
お母さん、冷たいのよね。
いつか私に気付いて
受け入れてくれる日は来るだろうか…
数日後
お店に来てくれたので
まだ、あの小さな妹のことで
モヤモヤしていたので
聞いてみた。
「実緒さん、私に妹はいたのかな?」
「どこで聞いたのその話は?」
「…
なんとなく
私以外にも
私のような子がいたのかな?
と、想ったんだけど…」
「妹というか…
この話は
姉さんも嫌がるし
話しちゃいけない
感じだったから…
もう20年前ぐらいになるかな。
姉さん、流産したんだよね。
その子が妹なのか弟なのか
私には分からないけど…。」
お母さん、流産していたのか。
知らなった。
あの夢の子は、本当に私の妹だったんだろうか。
でも、流産と言っていたし。
私は、父にも会ったことない。
私を妊娠したことが分かって
どこかに行ってしまったらしい。
お母さんが、あの様子だし
演技のお仕事以外はあんまりで
俳優の仕事のために
私のことは、お母さんの妹の
その時、
娘がいた。
私は、実緒叔母さん家族に育ててもらったのだ。
実母に捨てられたような気がして
子供の時、寂しかった。
私はいらない子なのか悩んだ。
子供ながらに
母を恨んだ。
そうか…。
隠し子がいるとか
そういう話ではないのか。
「一つ、二つ、三つ…」
石を積む。
たくさん積めたのに、小さい鬼に崩される。
赤ちゃんがいっぱいいる。
みんな石を積んでいる。
でも、鬼に崩され、また石を積んでいる。
よく見ると、この前、私の夢に出てきた赤ちゃんもいる。
白いブランケットを羽織っている。
私は、近くに駆け寄り
「どうしてこんな事をしているの?」
「罪を償っている。」
「あなたは、私の妹なんでしょ。
叔母さんから聞いた。
でも、もう20年前、ような
流産したって聞いたよ。」
「20年…。
もし、私が生きていたら
お姉ちゃんと同じように
学校行ったり、結婚したり
子供も生まれたかもしれないよね…」
私は、胸が締め付けられる思いだ。
「流産は、あなたのせいでも
お母さんのせいでもないんじゃない?
何が罪なの?」
「お腹にいても、魂はあるんだよ。
流れてしまうと、もう何もなかったように
みんな忘れ去ってしまうんだよ。
お母さんは、もう、私のことは、忘れてしまった。
子供を見捨てた罪。
親が罪を償わないならば
子供が罪を償うんだよ。
お姉ちゃんは、実緒叔母さんに守られたから
私が償っている。」
赤ちゃんは悲しげに言った。
どういうことなの?
と、ハッと気づいたら
また、うたた寝していた。
だんだん悲しくなってきた。
親の罪を背負う…
あの赤ちゃん、今も石を積んで
また、鬼に壊されているかと思うと…
お腹の中の魂かぁ。
魂。
みんなあるんだよね。
私も出産した経験があるから
お腹の中で
だんだんと大きくなる実感と
お腹を蹴ったりすると
もう意思があるのかなと
思うくらいに
愛しい。
魂とは心ということなのかな。
こういうことは
誰に相談したら良いのか?
夜、夫の
話した。
「弘さん、あのね…
信じてもらえないかもしれないけど
最近、夢を見るんだよね。」
「うん。それで?」
「赤ちゃんが出てくるんだけど
その赤ちゃん
私の事、お姉ちゃんって呼ぶの。」
「佐奈恵は兄弟いないんじゃなかったっけ?」
「私もいないと思って
お母さんに聞いたら
いないって言ってた。」
「じゃあ、ただの夢ということ?」
「実緒叔母さんに聞いたら
お母さん、流産したことがあるって。
その子が、妹なのか弟なのか
分からないけどって。」
「なるほどね…。
水子さんか…。」
「水子さんって何?」
「水子さんは、お腹の中で亡くなって
しまう子のことで
水子供養って
昔から言われているけど
お腹の中で亡くなった子を
手厚く供養することが
その子のお母さんのためにも
家族のためにもいいって
おばあちゃんが言ってた。」
「そうなんだ。
初めて聞いた。」
あの赤ちゃんも、そうなのか。
夜、眠っていると
どうやら
また、あの私の妹という赤ちゃんが出てきた。
今度は、街の通りすがりの人に
しがみつこうとしている。
私は「こっちだよ!
お姉ちゃんはこっちだよ!」
チラッと私を見たけど
無視して
カフェでくつろいでいる
優しそうなお姉さんに
しがみついている。
私は
「その人は、お母さんでも姉の私でもないでしょ
どうして、その人にしがみついているの?」
女の人は、だんだん苦しそうな表情になってきた。
赤ちゃんは
「この人は、優しい人なんだよ。
恵まれない子にも供物をくれる
優しい人なんだよ。」
私は
「でも、その人、苦しそうだよ。」
赤ちゃんは厳しい表情になり
「私だけじゃなく、たくさんの
かわいそうな子たちがしがみついている。
それは、苦しいでしょう。」
私は
「どうして優しい人を苦しめるの?」
「じゃあ、誰が救ってくれるの?
お姉ちゃん
私に気付いてくれたのに
自分には関係ない事…と思っているでしょ。」
「そんなことないよ。
あなたのことが気になって
気になって、夫に相談した所よ。」
「私は、今もさまよっているよ…
誰にも気付いてもらえないのが
悲しい。
だんだんと怒りに変わってくるよ。
だから
優しげの人に
私のこと気付いてもらえるかどうか
すがってる。」
「私は気付いたよ!」
「気付いても
素通りするなら、
気付いてないのと
同じなんだよ。」
そうなんだ…
涙が出てくる。
どうしたらいいんだろう。
目が覚めた。
悲しい気持ちだけが残る。
朝ごはんの支度を終え
夫の弘と子供たちを呼ぶ。
下の子にご飯を食べさせていると
「佐奈恵、すごい元気ないけど
大丈夫?」
「それがね
昨夜の夢に
また
あの赤ちゃんが出てきて
すごくつらそうな感じだったから…
どうすればいいのかな?って。」
弘は
「やっぱり水子供養してほしいんじゃないか?」
「そうだよね…
でも、お母さんは、自分が流産したこと
隠しているようだから
どうすればいいのかなって。」
弘は
「言いにくくても
お義母さんとそのことについて
話したらいいんじゃないか?」
弘さんは簡単にお母さんに話してみれば
というけれど…
話しにくいなぁ。
近寄りがたいし。
でも
あの赤ちゃんのことで
私は胸がつぶれそうになるくらい
悲しい気持ちだ。
もし、私も流産だったなら
私もあの赤ちゃんと同じように
さまよっている気がして
供養して、魂が安らかになるのであれば
そうしてあげたい。
しかし
20年前のことで
どこかに埋葬されたんだろうけど
見つけられるだろうか。
お母さんは話してくれるだろうか。
仕事の昼休み
佐奈恵は、母のマンションに来た。
今日はすぐに入れてくれた。
もうすぐ仕事らしい。
今日はきれいにしてる。
佐奈恵の母、
「最近、よくうちを訪ねるわね。
佐奈恵に嫌われていると思ったから…
意外だわ。」
佐奈恵は
“お母さんが私をきらってるんじゃない?”と
怒りがこみあげてくるけど
今日は、あのことできたのだ。
佐奈恵は
「お母さん
ちゃんと答えてほしいんだけど…
私に妹はいないって言ったけど
お母さん
20年前ぐらいに
流産してるでしょ。
「…。」
長い沈黙後
留美は
「そうね。
そんなこともあったけど
もう、20年前の話だし。
あの男のことと
そのことは
思い出したくないの。」
佐奈恵は
「どんなことがあったの?」
「言いたくないし。
思い出したくない。」
佐奈恵は
「なんて言えばいいか分からないけど
お母さんが大変な思いをしたのも
感じるけど
その20年前の流産した赤ちゃんが
私の夢に出てくるの。
助けてほしいって。」
留美は
「何言っているの?」
けげんな顔でこちらを見る。
佐奈恵は
「赤ちゃんの魂は
今もさまよっていて
お母さんを待っているよ。」
留美は
「信じられない。
これから仕事だから
もう帰ってね。」
佐奈恵は、マンションを後にする…
やっぱり…。
ちゃんと聞いてもらえなかった。
なんかつらいな。
悲しくなってくる。
数日後
また夢に赤ちゃんが出てきた。
今日は、赤ちゃんは嬉しそうな表情だ。
「お姉ちゃん、
私の事、赤ちゃんって呼ぶから
今日は、名前を持ってきた。
恵まれるの恵。佐奈恵お姉ちゃんと
一緒の文字だよ。
お母さんの留美の美。」
私は
「恵美かぁ。かわいい名前だね。
恵美って呼ぶね。」
私は言いづらかったが
「お母さんの所に行ってきたよ。
信じてもらえなかった。」
と聞くと
恵美は
泣き始めた。
ギャン泣きだ。
「ひどい!
私はどうしたらいいの?」
というと
雨の嵐がやってきて
私は吹き飛ばされた。
目が覚めた。
なんか体も重い。
でも、朝が来たから
ご飯を作って、保育園に行って
仕事をしなければ…
職場のカフェに来てくれた。
「実緒さん、聞きたいことがあるんだけど
その20年前の流産した時の相手の男の人と
お母さんは何があったの?」
「ひどい男よ。
飲み会の時に、姉さんを酔わせて
一夜を過ごし
妊娠したことが分かると
違う女を連れてきて
自分はその女と付き合っているから
自分の子じゃないって言い張って
どこかに消えたらしい。」
佐奈恵は
「信じられない。
嫌な男だね。」
なんかムカムカするし。
吐き気がする。
お母さんも思い出したくないわけだ。
私の携帯に
電話が鳴った。
実緒叔母さんからだ。
「佐奈恵!
大変よ!
姉さんが、撮影中に
階段から落ちて
骨折したらしい。
佐奈恵も病院に行って。」
そんな!
大変だ!
頭が真っ白になる。
何をすればいいんだ!
病院に行くのか。
「弘さん!お母さんが
撮影中、階段から落ちて骨折したらしい。
すぐ病院に行きたいんだけど」
「子供たちは俺がみるから
早く行ってあげて!」
病院に着いた。
「お母さん大丈夫?」
留美は、落ち着いていて
「大丈夫よ。骨折って大げさに言ったみたいだけど
骨にひびが入っただけよ。」
さすがたくましい俳優だな。
「良かったぁ。」
佐奈恵はふと妹の赤ちゃんの恵美のことを想った。
「お母さん、その
言いにくいんだけど
これは、あの
私の妹っていう赤ちゃんの
気付いてほしいっていうサインなんじゃない?」
今度は、留美が怒り出した。
「それは
そんなことないと思う。
私の不注意だったし。
その夢の子とは関係ない。
私は必ず
すぐに復帰して見せるわ。」
佐奈恵は
「どうして少しも夢の子のこと認めてくれないの?」
留美は
「佐奈恵こそ
すぐ感情に流される!
私はその子のことは
もう過ぎ去ってしまったことだし
目に見えないのに
考えられない。
霊的なものは
信じない。
私は今を必死に生きているのよ。」
「お母さん、そうやって
仕事ばかり。
私にも冷たかったよね。」
留美は
「私は、俳優をやりとげたいのよ。
ドラマに出続けたい。
他に考えられないから
実緒に育ててもらったでしょ。」
佐奈恵は
涙が出てきた。
「私がどう成長しているかとか
おなかがすいてないかとか
困っていることはないかとか
考えたこともないでしょ?
いつも自分のことばかり。」
留美は
「ちょっとした油断があると
落ちるのよ。
気が抜けない。
常に挑戦なのよ。」
「お母さんはドラマでは
完璧な優しいお母さんだけど
その少しでも私に向けられないの?」
留美はしばらく沈黙したが
「ドラマは、全部セリフが決まってて
どんな結末かも決まっている。
演じているとき、一番自分らしくいられる。
だけど
私の実の娘、佐奈恵には
どう笑顔を向けたらいいか
本当に分からないの。」
実緒叔母さんが病室に入ってきた。
しばらく留美お話して
私と一緒に、廊下出た。
実緒叔母さんは
「さっきの聞いたよ。
佐奈恵も辛かったね。」
叔母さんは
「姉さんは、祖母に育てられたのよ。
年子で私が産まれたから
親が大変だろうからって。
その祖母がすごい
しつけに厳しい人だった。
箸の持ち方から、姿勢から
勉強も厳しかったらしい。
子供の時から姉さんは
本当に笑わなくて、無表情。
甘えられなくて、辛かったと思う。
姉さんはドラマが大好きで
ドラマを見ている時だけ笑顔だった。
…。
私は、両親の下で育っているから
姉さんには負い目があって
佐奈恵を育ててほしいって言われた時
姉さんの助けになるならって、
あなたはかわいいし、喜んで引き受けたわ。
でも、親子でそんな風に思っていたなんて…」
そうなんだね。
お母さんも辛い子供時代だったのか。
数日後
母は、ドラマに復帰。
ケガをした設定に変更し、見事に演技をやり遂げているようだ。
さすがプロ。
本当にすごいな。
強い。
仕事中に、保育園から電話がかかってきた。
長男が熱を出したので迎えに来てほしいとの連絡だった。
私は、保育園に長男を迎えに行った。
そのまま小児科に行って
喉が腫れているよう
喉のかぜのようだ…とのこと。
お薬を処方してもらって
帰った。
夜中、長男の広斗の様子がおかしいようだ。
ゼイゼイして息が苦しそうだ。
すごい心配になり
弘と相談し、
夜間の救急病院に行くことにした。
ゼイゼイ息が苦しそうな長男に
“神様、どうか広斗をお助けください”と祈るばかり。
病院に着くと
検査室へ入って行きました。
体内の酸素が低く
炎症が肺にきて
気管支喘息になっているようだとのこと。
危ない状況なので
すぐに点滴治療の
入院となった。
「お母さん、苦しい。」と苦しそうにしている姿に
涙が出る。
“どうか助かりますように…”
夜中2時だったが
実緒叔母さんが駆けつけてきてくれた。
後ろにお母さんもいるようだ。
実緒は
「広斗どんな様子?大丈夫?」
「今は落ち着いてるみたい。」
実緒は
「そうなのね。あなたも休んだ方がいいよ。
看病変わるよ。」
留美が
「実緒、ちょっと広斗を看ていてね。
佐奈恵と話したい。」
と言って、2人で
病棟の休憩室に来た。
留美が
「佐奈恵、ごめんなさい。
あなたに当たって
本当に悪かったわ…。
あのあと
考えてみたけど
その赤ちゃんは
なんて言っているの?」
佐奈恵は
放心して
「赤ちゃんって。
私の夢に出てくる赤ちゃん?」
広斗の事を考えてたから
すぐに頭が追い付かなかった。
「お母さんに認めてほしいんだと思う。
供養してほしいじゃないかな。
でも、どうしたの?急に…。」
留美は
「あなたが、夢の赤ちゃんの話をして考えた。
でも、どうすればいいか分からなかった。
今、生きている娘にさえ向き合えないのに。」
沈黙して
「さっき、実緒から連絡もらって
ようやく気付いた。
自分の困難は必ず超えてみせるけど
私にとって一番大切なものを奪おうとしていることが分かった。」
留美はため息をついて、
「佐奈恵、あなたの悲しむ姿は耐えられない。
広斗も失いたくない。
私は目に見えるものは信じられるけど
霊的なものは信じないんだけど
直感的に、私へのメッセージって
分かった。」
沈黙して
「だから認めるわ。
20年前のあの子を
私が供養する。
約束する。
あなたも一緒に来てほしい。
あなたは素晴らしい母親よ。
あなたが生きていてくれて
本当に良かった。
実緒にも感謝している。」
佐奈恵は、心が温かくなるのを感じた。
涙が出て
「なんだか私も一緒に救われた気持ちになったよ。
お母さん、ありがとう。」
朝になると
広斗の熱も下がり、朝ごはんもしっかり食べた。
不思議なことに炎症反応も良くなり、
医者もビックリしている。
元気そうな広斗の姿に
本当に安堵した。
“神様ありがとうございます。
お母さん、ありがとう。
実緒さん駆けつけてくれてありがとう”
検査の結果も良く
ほどなくして広斗は退院になった。
数日後
母は、すぐ行動した。
私の妹、恵美が眠っているお寺に一緒に行った。
永代供養されているとのこと。
ご住職に法要をしてほしい旨伝えると
とてもいい事ですねと言われた。
ご住職は
「水子さんは、
咲く子のない
身魂の母の胎内
耳なし
鼻なし
顔のない
縁もゆかりももたない
身魂ここに来て
この母の御前に来て
水子の母と成ることを決め
不動は決めた
母の唱えるお経に
どうか浄化してほしい。
南無
南無
南無阿弥陀仏と唱える
良い子は
身仏にいだかれる
と唱える。
両親も忘れ、供養する人もなく
居場所もなく、帰るところもなく
なかったことのように
存在を認められず
とても辛い思いをしている。
供養してあげると
心安らかになり
次の場所へ向かえるでしょう。」
佐奈恵は
「和尚さん、その水子さんなんですが
私の夢の中で恵美って呼んでと
伝えてきました。」
ご住職は
「名前があるなら
紙に書いてあげて
そのお名前を家で
供養して差し上げたらいいですよ。」
法要が終わると
留美は
「和尚様、ありがとうございます。
私はなぜか心がすっきりと
洗われたかのような気分です。
家でも、供養して見守っていきたいです」
数日後
母のマンションに行ってみた。
「恵美」と書いてある
写真立てに入れて
お花を飾り
お水とお菓子をお供えしている。
部屋も清々しくきれいに整っている。
「お母さん、きっと恵美喜んでいるよ!
部屋もきれいになったね。」
留美は
「なんかこの子がうちに来てくれて
心が穏やかになったのよ。
私にこんな心穏やかになる日がくるなんて
佐奈恵、今まで本当にごめんね。
あなたには何をしてあげればいいのか。」
佐奈恵は
「今度、うちに来て!
こやって行き来できるのが
私は嬉しいよ。」
数か月後
ご住職は弟子とテレビを見ていた。
ドラマに坂東留美が出ている。
弟子が
「最近、坂東留美、益々活躍してますね。
演技が優しくなったっていうか。
深みがあるというか
以前は、完璧って感じで
寄せ付けない雰囲気もありましたが
親しみやすい感じになりましたよね。」
ご住職は
「水子さんが応援しているのだろう。
水子さんの恨みは怖いが
供養してあげれば、親子の情が通じ合い
助けのパワーもまたすごいものなのだ。」
水子 @hudoturugi
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