路上占い、あれこれ154【占い師は怒る】

崔 梨遙(再)

夕食時間に 2047文字 いかがですか?

 僕が夜のミナミで路上占いをしていた頃のこと。


 また、50代独身ロリコン、デブ&ハゲの立花さんがやって来た。やって来たのだが・・・僕は驚いた。


『よお! 崔さん』

『立花さん! 誰なんですか? その娘は?』

『1人で退屈そうに歩いてたから、声をかけたんや』

『君、何歳? 何年生?』

『私? 中3』

『立花さん! ダメだって言ったじゃないですか!』

『なんでや? 双方合意の上やったらええやろ?』

『君! 君は合意したの?』

『何? 合意って? 何のこと?』

『君はこの立花さんとお付き合いするの?』

『君って呼ばんといてや、私、多香子』

『多香子ちゃんは、どうなの?』

『どうって?』

『だから、この立花さんと付き合うの?』

『そんなわけないやん、「ちょっと食事行こう」って1万円くれたからついてきただけやで』

『立花さん! 既にお金で買ってるじゃないですか』

『ええやんけ、それも含めて合意の上やねんから』

『多香子ちゃん、ええの?』

『何が?』

『立花さんとHするの?』

『はあ? そんなわけないやん。食事くらいで1万円やったらええかなって思っただけやねんけど』

『ホッ・・・良かった。じゃあ、Hはしないんやね?』

『それは金額によるわ』

『え!? そうなん?』

『オッサン、私になんぼくれるの?』

『多香子ちゃんやったら、10万や!』

『安いわ。オッサン、脂ぎってるし超キモいから10万ではHできへんわ』

『ほな、20万か?』

『うーん・・・もう少し欲しいなぁ』

『ほんで、多香子ちゃんは処女なんか?』

『え? 処女ちゃうで。2人、付き合ったから』

『なんや、処女やないんかい!? ほな2万や』

『オッサン、このピチピチした15歳の体が見えへんの? 2万なわけがないやろ? この体が。私、言うとくけどテクニシャンやで。15歳のテクニシャンとHできるんやから、出すもの出さんかい!』

『わかった・・・えーと・・・うーん・・・ほな、5万でどうや?』

『安すぎるやろ! さっきの20万の話はどこへ行ったんや?』

『20万は処女やと思ったから出そうと思ったんや』

『オッサン、自分のキモさわかってへんの? 鏡見たら? あんたみたいなキモイ爺に抱かれるこっちの身になれや、それでも5万とか言うんやったら、私はもう帰るからな』

『ああ、待ってや。ほな、10万! 10万でどうや?』

『さっきの話、もう忘れたんか? こっちは20万でも悩んでたんや、20万以下なんか話にならんわ』

『あの・・・2人とも! なんか論点がズレてるんやけど!』

『なんや崔さん、話の途中やねんから。・・・あ、そうや、崔さんに2人の相性を占ってもらおうや』

『どうせ占なってもらうんやったら、私の恋愛運を占ってほしいわ』

『立花さん、僕はどうしたらいいんですか?』

『占ってあげてくれ、金は俺が出すから』

『立花さん、結局いつも沢山占わせるから、こっちは赤字なんですけど』

『まあ、ええやん。占ってあげてや』

『はあ・・・まあ、占いますよ。こちらは占いが仕事ですから・・・・・・ああ、多香子ちゃん、モテ期やわ。女性1人が男を5人乗せてるわ。これ、女性に出たらいい卦やねん』

『そうなんですよ-! 彼氏と別れたら告白されたり、歩いてたら今日みたいにオジサマが声をかけてくるんです』

『それ、気を付けた方がええで』

『どういうことですか?』

『病気をもらって病気をばらまいたりするかもしれへんで』

『うわー! それ、めっちゃ最悪!』

『っていうか、まだ中3なんやから、あんまり遊ばないように』

『崔さん、俺と多香子ちゃんの相性は?』

『マジで占うんですか?』

『うん、マジ』

『はあ・・・・・・ああ、良くないですね。大きく度が過ぎている、咎めアリ。多香子ちゃんは立花さんの手におえる娘(こ)じゃないみたいですよ』

『手におえなくても、1発くらい・・・なあ、多香子ちゃん!』

『だから、金額によるって言ってるやろ』

『2人とも、目の前で売春の話をしないでください。目の前にカフェがあるんですから、そっちで話し合ってください』

『多香子ちゃん、行こう』

『うん、でも、私は自分を安売りせえへんで』



『崔さん、またね!』

『あれ? 多香子ちゃん、1人?』

『うん、もう帰る』

『立花さんは?』

『カフェで落ち込んでる』

『良かった! 売春が成立しなくて』

『私、崔さんならお金いらないですよ。はい、私の電話番号』

『君が18歳を過ぎたら連絡するわ』

『崔さん、週末は路上占いやろ? また来るわ、友達と』

『はいはい』

『ほな、またね』



『崔さん・・・20万でも嫌やって言われたわ・・・最低でも30万、基本的には50万やって言われた・・・どう思う?』

『立花さん! ちょっと座ってください!』

『崔さん、なんで怒ってるねん?』

『いいですか、売春はダメだって言ったでしょう? しかも中3なんて・・・・・・論外ですよ・・・・・・』



 僕は滅多に怒らないが、その夜は怒った。


 そして翌日・・・・・・。


『おお! 崔さん!』

『立花さん! なんなんですか? この娘(こ)は!?』

『今、そこで知り合ったんや』

『君、何歳? 何年生?』

『私? 中1やけど』

『・・・・・・』



 僕は目眩がした。




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路上占い、あれこれ154【占い師は怒る】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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