ファンドマネージャー~異世界でモンスターをM&Aして強くなる~
祐祐(ゆうゆう)
第1話
この世界では10歳の誕生日になると、神からの祝福によりジョブとスキルが与えられる。
私、ディックスは9歳。10歳の誕生日1月10日までまだ1年近くある。たが、その誕生日が本当の誕生日かどうかは知らない。
私は生まれてまもなくこの孤児院に捨てられていた。院長のセリアさんによれば、多分生後1ヶ月くらいだったとのことで、本当の誕生日は12月ではないかと言われたことがある。しかし、正確な日付が分からないこと、祝福が与えられるのは必ず10歳の誕生日であり、そのタイミングで必ず本当の誕生日が分かることから、孤児院に来た日を誕生日として扱われていた。これはこの孤児院にいる全員が同じだ。
孤児院では祝福の前に、ジョブやスキルについて院長のセリアさんが教えてくれるようになっている。まだ祝福まで1年近くあるが、半年に1度のペースで対象となる孤児にまとめて教えている。今回は私を含めて3人が参加している。
「3人共揃っていますね。それではこれから神様からの祝福について説明します。」
セリアさんはゆっくりと、子どもたちが分かりやすいように説明してくれた。
ジョブとスキルは必ずセットで与えられる。ジョブは方向性、スキルは実際に効果を与えるものである。得たジョブとスキルはステータス確認によって詳細を調べられる。
ジョブはその人の10歳までの生き方や考え方に基づいて与えられると分かっている。スキルはジョブによって適正があり、適正が高いものは祝福のタイミングで同時に得ることができ、適正が低いものや高位のスキルはその後に各自の努力により得ることができる。そのため、この1年はまず自分がどのようなジョブに就きたいかを考え、就きたいジョブが決まったら相談して欲しい。そして、そのジョブに就けるようにどのような生活をすればいいかをアドバイスするので、是非それを実行して欲しい。
セリアさんの話を簡単にまとめるとこんな感じだった。
どのジョブに就きたいか。その答えはすぐには思い付かないが、私にはやりたいことがある。
それはお金を稼ぐこと。この孤児院で生活していると、院長のセリアさんと副院長のスワンさんの話している所を聞いてしまうことが何度もある。その内容の多くは孤児院にお金が無いこと、お金があれば孤児達にもっといい生活をさせてあげられること、というものだった。歳の割には大人びている、落ち着いている、とよく言われるが、そんな話をよく聞いていたからなのかもしれない。
だから私はお金を稼ぎたい。私自身のためでもあるが、お世話になっている孤児院に少しでもお金を入れて恩返しをしたい。
やりたいことは決まっているので、早速セリアさんに相談してみる。
「セリアさん、やりたいことは決まっていますがそのためのジョブが分かりません。相談に乗ってくれますか。」
「いいですよ、ディックス。一旦院長室に移動しましょうか。」
セリアさんに付いて院長室へ向かう。聞かれたくない子のために配慮がされているらしい。
「さてディックス。お話を聞きましょうか。」
院長室に入り椅子に座って、早速セリアさんに考えていることを伝える。
「考えは分かりました。ですがまず、孤児院のためにお金を稼ぐことは望みません。あなたがあなたのやりたいことのために生きて、その結果としてお金に余裕ができた時に少し寄付してもらえたら嬉しいですが、お金はあなたのために使ってください。」
「分かっています。お金を稼ぎたいのは自分のためでもあります。それが結果として孤児院のためにもなるというだけです。」
「分かりました。ただ無理はしないでくださいね。」
私の強い思いを見て、セリアさんは若干諦めたような呆れたような表情を浮かべはしたが了承してくれたようだ。
「それではお金を稼ぐためのジョブについてです。私が思いつくものをお伝えしますので、それぞれ稼ぎ方は違いますので、その中から選んでください。」
そう言って、セリアさんは候補となるジョブを教えてくれた。
騎士、剣士、闘士、魔術師、商人、鍛冶師、薬師、調理師、学者、医師
騎士や剣士は武器を使って戦い、闘士は武器を使わずに戦うジョブであり、素振りをしたり、走り込みをしたりすると就きやすいと分かっている。魔術師は魔法を使って戦うジョブであり、火や水など属性に関係するものに触れている時間が長いと就きやすいそうだ。4つともジョブに就いた後は、国や領主の軍に所属するのが一番安定していてそこそこ稼げるとのこと。ただし、軍に所属するのは狭き門であり、それ以外だと冒険者になる人が多いそうだ。
商人は計算をしたり、販売の手伝いをしていると就きやすい。鍛冶師は火を使っていたり、鍛冶の手伝いをしていると就きやすい。薬師は薬師の手伝いをしていると就きやすい。調理師は料理の手伝いをしたり、料理を運んでいると就きやすい。学者と医者は学問を勉強をしていると就きやすい。商人、鍛冶師、薬師はその名の通りに働く人が多く、学者と医者は国や領主直属として働いたり、そのジョブを目指す人に向けて教える教師となることが多いとのこと。
大体想像していた通りだが、ちゃんと就きやすいと判明しているのは安心だ。
この中で一番稼げるのは何かをセリアさんに聞くが、リスクはあるが稼げる人は稼げるのは商人と冒険者。安定しているが狭き門なのが軍、学者、医師。また、学者と医師は学ぶのにもお金がかかる。リスクは小さいが大きく稼ぐのは難しく、弟子入りする相手次第でブレが大きいのが鍛冶師、薬師、調理師。とのことだった。
説明を聞く前から、危険はあるが冒険者になりたいと思っていたので、そのことは言わずに剣士を目指したいことを伝えた。
軍属という安定している仕事を目指したと思ってくれたのだろうか、セリアさんの顔には安心感が見えた。すみません、軍属になるつもりは全く無いです。
自分の目指すべき方向性が確認できたので、これからは剣士を目指して、素振りや走り込みに取り組もう。
冬本番だった1月から始まり、春を超え、夏の暑さにも負けずに鍛錬に励み、秋の紅葉も通り過ぎ、再度冬が始まった頃、遂にその時がやってきた。
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