甘くて苦く、何処かおかしい短編集。けれど、無機質な現実の中で必死に呼吸をしている人なら、この作品の底に流れる「体温」をきっと感じ取れるはずだ。
私が思うに、現代人は「恋」と「愛」の違いを知らなさ過ぎる。これらはもっと深く、泥臭く考えるべきであって、「溺愛」とか「激重」の文脈だけで定義するのはどうかと思う。
だからこそ、こうした作品は必要だ。いっそ教科書として読んでみないか?
綺麗なものに憧れるのは当然。夜空の星が欲しくて、届きもしない梯子をかけたり屋根に登ったりする――そういう馬鹿な真似は、誰だって一度はすることだ。
でも「完璧な人なんていない」と「幻想を解体された瞬間」に……「愛」を知るための試練がスタートする。
それは悲しいことだし、正直言ってツマラナイし、しかも少しツライけど、「あれ?もしかして暖かい……?」とか思えるようになれば、例えばそれが脳のバクによる結果だとしても、人生はほんのり薔薇色になるのかも知れない。