ある男の末期
@hudoturugi
第1話
「難しいです…。」
「どこが分からなかった?」
今は里奈の家。
里奈は高3で、鉱一は大学4年生。
鉱一は、里奈の家庭教師をしている。
鉱一は、この家庭教師のバイトが楽しい。
里奈のフワッとして、おっとりしているところが気に入っている。
奥から、里奈の父親が来て「鉱一くん、うちの里奈は、勉強どうですか?大学行けそうですか?」と聞いてきた。
「今からがんばれば、全然大丈夫ですよ!」と鉱一は言った。
里奈の父親は靴のデザイナーで、家でも仕事をしているとのこと。
「ただいまー!」里奈の弟、健太が帰ってきた。
サッカー部の部活が終わったらしい。健太は、思ったこと何でも言っちゃって、おっちょこちょいな所もあるけど、元気でいい。
「ただいま。」里奈の母親が帰ってきた。
「鉱一くん、うちの娘の勉強、よろしくね。」
「里奈はよくがんばっていますよ。」
「それなら良かった。
里奈、大福のおみやげ買ってきたからお供えお願いね。」
里奈は、大福を持って隣の仏間へ行き、お仏壇に大福を供え線香を焚き、ちーんと鐘を鳴らし手を合わせている。
里奈の姿が可愛らしいのだ。
里奈の母親が「鉱一くんもご飯食べていく?」と聞いてくれたが
「あ、もう時間ですので、僕はこの辺で失礼します。」と言った。
健太は「鉱一さんも食べてけばいいのに」
「ありがとう。またね。」
帰り道。
歩きながら思いにふける…。
本当はごちそうになりたかった。
里奈の家に行くと、心が温かくなる。
もうちょっと居たかったなぁ。
里奈の手を合わせる姿が心に残る。
ご先祖様か…。
家族か…。
鉱一は家に帰ってきた。
「ただいま。」
誰も居ない。
ご飯でも炊くか…。
しばらくすると母が帰ってきた。
「お惣菜買ってきた。」
鉱一は“それね。いつものね。”
母は「ご飯炊けてないの?なんで?」
鉱一は無言。“俺も今帰ったんだよ!”
「先に帰ったんだったら、ご飯炊いといてくれれば良いのに。」
俺は母には言い返さない。言えば10倍くらい文句が返ってくるから、疲れる。
その場にも居られず、2階の自分の部屋に行こうとすると
母が「洗濯物取り込んどいてねー!」と叫んできた。
イラッとする。
2階に行くと、弟の晴善がいた。
“善晴、居るではないか
だまって2階でひっそりしているな”
「善晴、お前、洗濯物たためよ。」
「兄ちゃんがお母さんに頼まれたんでしょ。
お母さんに言いつけるよ。」
それな、いっつもそれな!
最強だな。お母さんに言いつけるよ。
なんでいっつも俺ばっかりなんだよ。
お母さんも善晴には甘いし。
洗濯物をたたみ終えた紘一は、下におりてきて
「お母さん。ご飯まだ?」
「紘一がご飯炊いといてくれなかったから。
洗濯物たたんだら、お風呂掃除ね。」
俺のせいかよ。
疲れる。
家に帰ると本当に疲れが倍増するよ。
それでも言い返せない。
絶対、早くこの家から出て
一人立ちしたい!
父が帰ってきた。
「紘一、まだ家庭教師のバイトしているだって聞いたぞ。
いい加減にしろ。分かっているのか。大学4年生なんだぞ。」
帰って来て、急にその話…。
自分でも分かってる。
先のこと考えて、今何をしなきゃいけないか分かっている。
父には何も言い返せない。
なんだろ。吐きそうになってきた。
たまらず、外に出た。
あまりの空腹で、コンビニでおにぎりを買って食べた。
家にも居づらい。
必ず、稼いで、お金持ちになって
見返したい。
大学の帰り道、里奈を見かけた。
里奈の家庭教師は辞めたけど、その後、
勉強の様子は気になる。
「里奈。」
「紘一さん。元気でした?」
「元気だよ。里奈。この前の共通テストどうだった?」
「…。 ひどかった。」
「そんなに。」
「紘一さん、私、大学行けなかったらどうしよう。」
「まだ、時間があるから。」
“かわいいな。どこにも行けなかったら、俺が娶ってやるぞ。”
通りがかりに神社があって、里奈が
「紘一さん、お参りに行こう。」
急になんだ。
「紘一さん、元気ないから
不動明王さまに、元気が出るようお願いしよう。
紘一さんが大学卒業後、就職できますように。」
「里奈は優しいね。自分の願いはないの?」
「私も大学受かりますようお願いする。
なんとなく紘一さん元気がないので、お不動さまに元気に
なれるようお願いしようと思って。」
里奈、なんていい子なんだ。
俺の事、好きなのか?
里奈が一緒に居てくれたら、里奈の家族に囲まれて
優しい気持ちになれそう。
「里奈は好きな子いないの?」
「…。 いる。」
赤い顔してるな!
俺のことか。
しばらくして
里奈と歩いている好青年を見かけた。
明らかに、里奈、嬉しそうだ。
“俺の勘違いか
自意識過剰で恥ずかしいわ”
里奈のことも好きだったけど
大学の同期で気になってる子がいる。
明るくて、前向きで、かわいいのだ。
元気で、先を見通す力がすごい。
静子は、ゼミが一緒なのだ。
静子と一緒に居たら、互いに支えあっていけそうな気がする。
静子は、大手商社に就職。
俺は、不動産会社に就職した。
親にはいろいろ言われたが
家を出た。
これからは一人で生活していくのだ。
仕事帰り、商店街通りを歩いていると
八百屋に里奈がいた。
とっさに隠れてしまい、様子を見た。
別に悪い事しているわけではないが
その後、気になってしまう。
今頃は、大学に行っているはず。
家族経営の八百屋のようだ。
里奈は、妊娠している感じだ。
奥から、あの時の好青年が出てきた。
“あいつと結婚したのか…
なんか
なんだろこの敗北感は…。
俺が隣に居たかった…”
胸が苦しくなって、その場を立ち去った。
もう戻れないのだ。
戻れないも何も
付き合っていたわけでもないのだ。
なんとも悲しい気分なのだが
大学の同期が飲み会に誘ってくれるので
そこに行くことにした。
静子も来ていた。
静子は元気で前向きである。
俺の様子を見て、気遣ってもくれる。
いい子だなぁ。
俺は静子と付き合うようになり
結婚した。
実は、俺は借金がある。
大学の時の奨学金がまだ返済しきれてないのだ。
静子は優しくて
いつか返せるし、自分も働いているからと
大丈夫と励ましてくれた。
静子の希望もあり、マンションの家を買い
新車も買った。
名義は静子。
彼女の方が経済力があり、ローンがないから。
娘が産まれて、彼女はさらにたくましくなった。
夜泣きをする娘をあやして
睡眠時間が3時間でも仕事に行き
本当にすごい。
母は強し。
頭が上がらない。
俺は実家の林田家に帰りにくい。
家に帰っても、厳格な父と用事を押し付けてくる母に
うまく対応できない。
なんとなく足が遠のいてしまう。
妻の実家にはよく行く。
娘が行きたがるのだ。
妻の実家は、優秀な方ばっかり。
ちょっと上から目線で話してくるところは
静子そっくり。
でも、基本的には優しく接してくれるし、
娘もかわいがってくれて、ありがたい…
ありがたいが
気を遣うし、何をしたらいいか
落ち着かない。
仕事が一番、気持ちは楽な気がする。
営業がんばれば、成果もついてくるし
認めてくれる上司もいる。
でも、仕事が終われば、みんな家族の元へ帰る。
俺も帰るけど。
「ただいま」
仕事から帰ってきた紘一。
妻の静子は、娘を保育園に迎えに行って
先に帰っていた。
「おかえり。」
と、返事が返ってくるものの
バタバタ忙しい。
「パパ。手洗ったらそのままお風呂掃除してくれる?」
あー、はいはい。
「あと、洗濯物取り込んでおいてくれる?」
洗濯物を取り込みながら
紘一は“俺はどこ行っても同じ境遇なんだな”
ちょっと息苦しくなりコンビニへでかけた。
俺の居場所か…。
俺は結婚したんだ。
しょうがない。
しょうがないってなんだ
このあきらめた感は。
俺の子は娘一人で
その娘も結婚した。
娘が思春期の時は
本当に話してもしてくれなかった。
妻の静子は
今でも元気いっぱいで、仕事に
趣味の旅行に友達と行ったり
楽しそうだ。
しかし、俺の入る余地はなかった。
人生は、本当に早く過ぎ去ってしまうものだ。
俺の人生はなんだったんだろうか。
若い時は、成功して、たくさん稼いで
見返してやるんだって息巻いていたけど。
結局、それもなんだったんだろうか。
仕事もノルマがあって
そのノルマを達成するのに必死でやってきた。
仕事も向いていたのかよく分からない。
ローンがあったから、必死にがんばっただけだ。
雑貨屋さんみたいな店主だったら
楽しそうだな。
それも大変か。
今、ネットで何でも買えるんだから。
と、人生を振り返りながら、紘一は
78歳、肺炎で亡くなった。
葬儀は家族葬でひっそりとおこなわれた。
亡くなった時は、分からなかった。
息苦しさが急にと解き放たれた。
妻や娘は冷静である。
さすが静子だな。
葬儀がおこなわれて、ご住職がお経をあげられ
ハッと気付いた。
それでも懐かしい同期が数名来てくれ
嬉しくて、話しかけた。
応えてはもらえないが。
同期が話していたので
嬉しくて近くに寄った。
「理屈っぽい感じのやつだったよね。
静子ちゃんよく耐えたよね。」
そんな!
俺と結婚したことは、耐えることだったのか。
俺こそ耐えたよ。
家事も手伝ったし。
静子のやることは協力してきたのに。
静子は「悪い人じゃないだけど、思い込みが激しいから
合わせるのがね…」
そんな!
合わせてあげたみたいな言い方。
なんか辛くなってきた。
俺の人生はなんだったんだ。
お前ら、ただじゃおかないぞ。
それでも初七日法要、四十九日と
お墓には入れてくれてよかった。
それでも
静子は、お友達とさらに楽しそうだな。
娘も自分の家族のことで精一杯だな。
俺は、とぼとぼと道を歩いている。
すると門が現れて
怖そうな門番が尋ねてくる。
「お前の人生はどうであったか。」
「私の人生は、よく分かりません。」
門番は、けげんな顔でこちらを向き
「お前の人生何をなしたのか。」
「結局、分かりません。」
門番は
「しばし、待て。」
しばらくすると、女の人が来た。
紘一は“あの人も亡くなったのかなぁ”と思った。
門番は、女の人に向かって
「お前の人生はどうであったか。」
紘一は“俺と同じ質問だな”と思った。
女の人は「いろいろありましたが、おかげさまで、元気に無事過ごせました。」
紘一“亡くなったのに元気で…とは”
門番は「お前の人生、何をなしたのか。」
「大きい事ではないのかもしれませんが、
天涯孤独の身でしたが、夫に恵まれ
家族ができ、仲良く暮らせたことは一番の幸せです。」
門番は、深くうなずき
門を開けた。
紘一は「門番さん
どうして、あの女の人は良くて、私は行っちゃだめなんですか?」
門番「何か人生思い出したか?」
紘一「私は不動産業をしていました。
それなりにがんばったと思います。
家族は、妻と娘がいて、娘も結婚しました。」
門番「家族とはどうか。」
紘一「仲良しですよ。」
門番「親とはどうか。」
紘一「親とはまぁまぁですよ。」
門番「その割には応援がないなぁ。」
“応援とはなんだ?”
門番「もう少しよく考えてみなさい。」
“意味が分からない。何を考えればいいのだ。”
門を100人くらい通った後
俺も通してもらえた。
何故通れたのか分からない。
今度は川が流れている。
これを渡るのか。
船に乗っている。
これが三途の川ってやつか。
俺は船に乗れなかった。
泳いで渡るのか。
流れが速くて溺れそうだ。
なんとか渡れそうになったが
向こう岸にいる人達から
来るなと言われた。
向こう岸の人たちに手で払われると
また、最初の地点
川を渡る前に戻っていた。
苦しい思いをしたのに…。
また行くのか。
俺も船に乗りたい。
船頭さんに「私も船に乗りたいんです。」
というと
船賃はありますか?と尋ねられ
持ってないと伝えると船はいってしまった。
泣けてくる…。また泳いで渡るのか。
三途の川を渡るには六文銭がいるって聞いたことあるが
六文銭っていくらなんだ。
意を決して
もう一回、泳いで、川を渡ろうとすると、
向こう岸には、よく見ると、俺の両親、祖父母、林田家の親族のようだ。
なるほど、先に逝かれた方々なのか。
でも、どうして俺に渡らせないようにしてくるのだ。
ここから生き返れということか!
また、最初の地点に戻ってきた。
いろんな人が続々と来る。
どうも引き返せない。
諦めて、また泳いで、川を渡る。
やっと向こう岸に着くと
父から「お前は長男なのに、何にも分かっとらんな!」
母は「もっと孫に会いたかったのに、連れてきてくれなかったわね。」
亡くなっても、同じようなことを言われるんだな。
“俺が悪いのか?
自分たちは顧みないのか?”
亡くなっても悶々とする。
今度は閻魔大王様の前に来た。
“俺は人生を裁かれるのか?”
閻魔大王様は
「お前の人生は、すでに報告が来ているが
お前は、自分の人生どうであったか?」
門番と同じような事を聞かれている。
これで分からないなど言うと、永遠に出してもらえなさそうだな。
就活時の面接のようだ。
紘一「仕事は不動産業で、妻と娘と仲良く暮らしていました。」
「その割には、お線香一つも上がらないようだ。
本当に仲良かったのか?」
そんな!
そうか。静子は友達と旅行やら趣味の集りで
家にあまり居ないのか?
娘は自分の家族で精一杯なのか。
静子よ。お願いだから線香あげてくれ!
紘一は黙っている。
「黙っていても、全部お見通しなのだ!
天には全部筒抜けなのだ。
お前は地獄で反省しろ。」
紘一はビックリして
「なんでですか?私は他人に迷惑などかけたこともないし
悪いことなどしたこともない。なぜ、私が地獄なんですか。
世の中には、もっと悪いことした人がたくさんいるでしょう!」
閻魔大王様は「自分がなぜ地獄に行くのか行ってから考えたらいい。」
あっという間に地獄にきた。
重い石を背負って歩いている。
山に登るようだ。
山に登らない人もいるようだ。
お遍路さんのような格好で、わき道を通っている。
俺は行けないのか。
山を登って、下って、次に進むのかと思ったら
また、山に登っている。
辛すぎる。
あまりに辛すぎて気絶する。
ふと気づくと
現世にいるようだ。
静子。俺だ!気付いてくれ!
一生懸命、静子を揺さぶるが気付かない。
静子は、友達といる。
「今日は、頭が痛いし、肩も痛いので帰るね。」
俺が揺さぶると、頭痛と肩こりになるのか。
ふと気づくと
また地獄に戻っている。あの気絶からだ。
きつすぎる。
また、石を背負って歩き始める。
なんなんだろうか。
何故俺はこんなことをしなければならなかったのか。
背負っている石が重く感じる。
虚しさを感じる。
俺も幸せになりたかった。
里奈と家族になりたかった。
そういえば里奈はどうなっただろう。
里奈のあのあたたかく優しい真心の中に
俺も入りたかった。
あの時、ご飯をごちそうになれば良かった。
家庭教師を続けていれば良かった。
家庭教師を続けていれば、不動産業には就けなかっただろうから
やっぱり、里奈とは縁がなかったのだ。
いや、あの好青年がいなければ!
未練がましい。
あまりにも未練がましいな。
俺も心温まる家庭に憧れる。
何故なれなかったのか。
奨学金、家、車…ローンがたくさんあって。
静子と共働きで
なんとかローンも返したし。
普通の家庭だと思っていた。
ローンのせいではないな。
結局、俺は静子を愛しただろうか?
静子は優秀だったし
どこか頼ろうとする気持ちばかりが
先行していた気がする。
俺は天国へいけるのだろうか?
小さな仏様が来られた。
「どうですか?
反省されましたか?」
俺は「反省するも何も…
俺は悪いことなどしたことない。」
仏様は、
「自分の両親のことはどう思う?」
「父は、俺に厳しかった…
母はとにかく口うるさかった。
俺のことを頼ろうとしている割には、感謝がない。当然と思っている所がきつい。」
仏様は、
「厳しいのは何故か?」
「まともな社会人になるため?」
仏様は、
「母親が口うるさいのは?」
「性格と思いますよ。」
仏様は、
「共働きは、大変と思います。」
俺は、
「里奈の所も共働きだったけど、里奈の母親は優しげだった。やっぱり性格なのでは?」
仏様は、
「自分の母親と向き合うことはできなかったのか?」
「言うと10倍くらい文句が返ってくるから、言い返せないし、向き合えない。俺のせいではない。」
仏様は、
「なるほど。」
俺は、
“良いのか?
親孝行がなってないって言われるかと思った”
仏様は、
「祖父母のことはどう思う。
この前、三途の川渡る時、会っただろう?」
「お盆と正月に会うぐらいで…
何故怒られるのか分からない。
疎遠だったけど、怒られることはしていない。」
仏様は
「そうか…
もう少し考えてみるか。」
“考えてみるかってどういう意味か?”
と思った瞬間
今度は火の山に来た。
暑い…。
燃え盛る…。
なんでこんなことになったのか。
暑くて暑くて
汗が止まらない。
なんだろうか?
死んでもつらい。
そうか。
さとらないと、次には行けないのか。
暑くて、喉が渇いてきた。
水…。
水が飲みたい…。
天国ってあるのか?
どんな人が天国へいくのか。
死んだら、輪廻転生。
生まれ変わるのかと思ったら
そんなに簡単には、いかないんだなぁ。
火の山を歩いていく。
昔の人もこんな感じだったんだろうか。
息が苦しいのもつらいけど
喉の渇きもつらいのだなぁ。
仏様が来られた。
「どんな様子か?」
「歩くのもつらいし
喉が渇いて死にそうです。」
「死んでいるから死ねないな。
お仏壇にお水やお茶をお供えするのは、そういうことなのだ。
どうやら助けが来たようだよ。
孫娘かな。
お前が天国行き、安らかであるようお祈りしているようだ。」
“孫娘!
お年玉をあげたぐらいなのに
どういうことなんだ”
仏様は
「子孫が供養することで、死者は救われ、力をもらうのだ。良い孫娘だな。おかげで林田家は救われたな。」
鉱一
“そうなのか…
孫がいて本当に良かった
しかも良い子
俺はそんなことも考えもしなかった
供養…
お墓参り…
親が行くから
一緒に行ったけど
そんなに深く考えたことなかった
亡くなっても
繋がっている親子孫子の関係なのか…
それは、林田家のご先祖様は、俺に怒るのも分かる気がしてきた
里奈の家では
お仏壇にお供えして
一緒に暮らしているような感覚
家族と先祖と一体しているような
愛が溢れる感じ
うちと、林田家と、そこが違うんだなぁ
俺は親とあんまり関わりたくなかったから、自立という名の下に、逃げるように家を出た
親の法事はちゃんとしたけど
供養したかというと
どうか分からない
自分が家族を持った時
俺は実家のような家族関係ではなく
愛情溢れる家庭にしたかったけど
気付くと親と同じような家庭になった気がする
どうすれば良かったのか
供養か…
供養していたら
生活が変わっていただろうか?
分からない
でも
手を合わせることで
ありがとうという感謝の気持ちは湧いてくる
そういうことなのか
感謝を伝えるか
なかなか思っていても
ちゃんと言えたかどうか定かではない
仕事では、頭を下げ、ありがとうございます…と何度も言ったけど
やはり
俺は家族とちゃんと向き合えなかったんだなぁ”
仏様は
「心は変わってきたか?」
「生きていることは普通と思っていた。
自分がしてきたことは
家族に影響するのだなぁと。
仕事は必ずやり上げたけど
家族と向き合えたかどうか分からない
でも、こんなにもご先祖様が困っているとは思わなかった。
もう死んでしまったし、これからできることはあるのだろうか。」
仏様は
「見守ることだな。
未練を残し、悪霊にならないように
自分の修行を積む。」
「修行って何をするんですか?」
仏様は
「では、修行の場所に行こう。」
修行の場所に来たようだ。
たくさんの人がいる。
いろんな人がいる。
仏様は
「ここで、心安らかに、
誘惑に惑わされず
経典を読み、功徳を積む。
心洗われれば、来世に行けるだろう。」
“そうなのか。
修行なんだな
来世か。
やっぱり輪廻転生なんだな。
俺に力をくれた
あの孫娘のことは
ずっと見守りたい。”
ある男の末期 @hudoturugi
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