軌道の外側
郡陸理佐
軌道の外側
光は流れて、溢れて、零れる。
宇宙ではそれが常態で、意味も必要
としない。
船外作業に出たのは三人だった。
私は船長として残り、モニター越し
に、その様子を見守っていた。
彼らの動きは正確だった。
ロボットアームと同じ軌道で、
無駄も迷いもなく、時を遠くへ追い
やっていく。
修理は完了した。
帰還が始まる。
一人。
二人。
三人。
白い宇宙服が太陽光を受け、
順番に正面から消えていく。
―――そこで終わるはずだった。
モニターの端に、まだ光を受けてい
る影がある。
私は反射的にズームした。
映し出されたのは私の宇宙服…だ。
人が宇宙空間で?
ありえない。
答えは……私と同じ…
喉が渇く。
だが心拍は乱れない。
この結論に至る思考だけが、異様な
ほど滑らかだった。
エアロックが開く。
警告は無し。
生体認証は全て肯定する。
空気が流れ込み、
直後に、音が発生する。
トン
金属を弾くような、乾いた音。
歩いてはいない。
それでも私は、それを足音だと理解した。
トン カン
船体の奥から、ずれて振動が返ってくる。
その間隔、その癖 ――
私が考え事をしながら移動するときのも
のだ。
―― 距離が消えた。
目の前に立つ「私は」何も言わない。
恐怖も疑問もなく、
ただ任務を終えた船員の顔をしている。
二十一年前が静かに蘇る。
命綱が外れ、
母船から遠ざかっていったあの瞬間。
あのとき宇宙空間に残ったのは、
死体ではなかった。
この船には、同じ記憶を持つ私が
二人…いる。
どちらも正しく、
どちらも不要だ。
この船に必要なのは、ひとり。
私か私のどちらかだ。
余分などちらかの私は消される。
地球に帰還した私は、
翌朝いつも通り、顎をつき出して
髭を剃っていた。
軌道の外側 郡陸理佐 @HgmY2820GhyM
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます