第64話 おーい、大丈夫かー?

「どこに隠れた!」

「探せ!そう遠くへは行ってないはずだ!」

「この会社の闇を漏らさせるな!」


研究室のラボの監視カメラの死角に隠れてから門の創造で勝遊君とのぞみちゃんを連れ出し、会社の出入り口付近で潜伏していると何か会社からガスマスクを付けたザ・猟犬部隊が外へ出ていく姿が見えた。何であいつら銃持ってたの?ここ日本……じゃないけど日本に準ずる感じの世界なのに。


当然ながら通行人達はパニックになっていたけど、ガスマスク部隊は構わずに付近の捜索を始める。いやー、良い物が見れた。とりあえずこの会社自体は黒だな。問題はあの部隊を見て震えているのぞみちゃんの親がどこまで黒か、というより天王寺谷財閥のどこまでが黒かという話になって来た。


確認が取れたので、一旦ホテルの部屋まで門の創造で移動。そこでとりあえずのぞみちゃんへの尋問と勝遊君&フェリスの治療を開始。とりあえず治療の方はベーゼに任せて、のぞみちゃんの持ってる情報だけでも確認するか。


「まず聞きたいんだけど、勝遊がこうなるってわかってラボに渡したわけじゃないよな?」

「当たり前じゃないか!

あいつらボクが護衛を引き連れて監査に来ていたらどうするつもりだったんだ!」

「いや、その時は奥の部屋とやらに隠して綺麗さっぱり掃除するんじゃない?

勝遊がどこにいるか聞かれたら『今日明日は休日を与えたので外出しております』的な言葉で煙に巻いてただろ。それで騙されるぐらいにはのぞみもポンコツそうだし」

「うぐ……」

「それか最悪、その護衛に手の内を潜り込ませて誘拐までやっていたかもな。人質としての価値は高そうだし」


のぞみちゃん自身は、かなり真っ当な倫理観を持ち合わせているように見えるけどこいつ初対面であのデストロイヤー君を実体化させて襲わせたんだよなあ。まあ死にはしなかっただろうけど、自分が一般人だったら大怪我に繋がっていたかもしれないことを考えるとやっぱコイツもTCG系異世界の住人だ。


天王寺谷財閥についても聞きたいし、天王寺谷財閥の現当主ののぞみちゃんの父親のについても聞きたいけど、下手したらのぞみちゃんの父親がラスボスなんだよなこれ。天王寺谷財閥自体、この世界では唯一の超巨大グループ企業で、あの遊技台も天王寺谷財閥の傘下企業が作っている。


飛行機やヘリ、電車、自動車等々の乗り物を造るのがメイン産業であり、そこで得た利益を遊技台に突っ込んでいるのは薄気味悪いものを感じる。始まりは鉄道会社っぽいからそこから巨大化した感じだな。列車もレールも全部自前で用意すればええやんが通った模様。


「……それで、ボクをどうするつもりなの?」

「ああ、事情を説明して現地協力者にしようかなと。お金も持ってそうだし。

あとああいうこと許せないタイプなんだろ?」

「人として許しちゃダメだと思うけど」

「お。世界と1人……いや、カードの精霊だから人権が現状ないような存在を天秤にかけて精霊の方を取れるなら条件には合致してるし本格的に協力頼むわ」


とりあえずのぞみちゃんには自分が別世界から来た事、恐らくこの世界には筋書きが存在し、そこから既に逸脱していること、逸脱したままだと世界が終わる可能性すらあることを告げる。胡散臭そうにしていたけど、自分がこれまでに何度か魔法を使っていたからある程度は信じてくれたみたいだ。


実際問題、この手のTCG系異世界では本来の筋書きというものがあり、そこから逸脱したから呼ばれることが多い。逸脱してなかったら全部本来の筋書きの主人公君が解決していくから世界の危機自体は訪れるけど、外からわざわざ人を持って来る必要はない。


大前提として、自分はこの世界に呼ばれている形だからな。その上で難易度が高いことも確定しちゃっているから序盤も序盤で逸脱しているのだろう。その原因が恐らく分かったため、自分が主人公の代わりをしていく方法よりも、正した方が早そうな気がしている。たぶん分岐点は勝遊君がのぞみちゃんに負けた所かな。


……逸脱したなら、それを正すのが一つの方法ではある。2週間の拉致監禁と精神崩壊がどこまで影響しているかは分からないけど、正せそうなら正していくのも一つの方法だ。ただ勝遊君の心砕けてるんだよなあ。触れるだけでビクッとするのはもう治らないタイプのトラウマなんよ。でもまだこっちは多少の反応があるだけマシっていう。


「……おーい、大丈夫かー?

起きてるかー?

ご飯くえよー?」

「ナナモリの持ってるそれ何?」

「我の神界で採れた木の実だ!」

「はい没収。……これ一粒食ったら寿命が伸びそうな感じの代物だな」

「最近はましろの神界から牛や豚を輸入して、植物達に食べさせているのだ」

「……牛を食うのか―」


フェリスも身体の方は治ったけど、心の方は崩壊しているというか何をしても反応を返さないので重症。ナナモリがフェリスに変な物を食べさせようとしていたので取り上げ、自分が持っている携帯食糧第4号を口の中にぶち込む。


味はクソ不味いが、これを食べたらとりあえず栄養面での心配は要らないからな。あと何故か傷とかそういうのが回復しやすくなる。特に精霊側のフェリスは内臓が回復し切ってないだろうから、これで回復させる意図もある。後は……不味い物を口に入れさせられて、吐くという行為をするかのチェックも出来る。今回2人とも吐き出さなかったので思ってた以上に重症だ。勝遊君の方はこれ味覚無くなってるよ。


死人すら生き返るレベルの不味さなのだが、これに生きたまま反応なしというのは時間がかかるな。とりあえず面倒を見させるのはベーゼで良いか。聖女だし、こういうの見捨てられないだろ。


「……それで、ボクに代役をしろと?」

「まあベターなところな対応としてな。自分が全部解決するならそれこそこれから複数あるであろう危機を全部対処しないといけないし。現地の英雄を育てる方が楽そうならそっち採るよ」

「英雄?負けたのに?」

「それはこっちがわりとズルいことしてたからだよ。ナナモリってカードはこの世に存在しないわけだし」

「……?

精霊憑きのカードであれば世界に1枚しかないのは珍しい話じゃないけど?」

「えっ」


のぞみちゃんと話をして、自分達にはまだまだこの世界の常識が足りてなかったと判断。大泉と別れたのはもう少し情報収集してからの方が良かったかな。別行動した方が選択肢が増えるのは間違いないし、現状大泉の方も表ルート突き進んでもらっているからそろそろ賞金稼ぎとして大会の1つや2つ優勝するはず。


……そういえばハクの精霊って見てないし、大泉ってこの世界にはないカードは多く持ってるけど精霊憑きのカードはいない感じ?パックを買って引き当てられる程度の運命力は持ってると思うけど、何というか不安だ。

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