第6話 憂鬱なとき

 5月の連休が明けた。蒸し暑さが増してくるこの時期から制服は冬用でも夏用でも可となる。長袖の夏服がエアコンをつけ始めるこの時期には快適だ。念のため濃紺のカーディガンも準備して、授業を受ける。

 中間テストも近くなり、そろそろテスト勉強かという時期に入ってきた。晴華は憂鬱な気持ちで日々を過ごしている。

「はぁ~」

 お弁当を食べながら大きなため息をつく。

「どうした晴華?中間テスト近いからテンション下がってる?」

 晴華のため息に由依が心配しながら話しかける。

「テストはいつも通りかな。もう1つ憂鬱の原因がある」

「何?」

「ここでは言えない・・・放課後、聞いて」

「ここでは言い難いのね。いいよ、じゃあその件は放課後ね」

「由依、ありがとう。じゃあ行ってくる」

「いってら~」

 由依に見送られ、図書室に向かう。どこに行くと言わなくても分かりあえる。

 最近、その図書室が憂鬱なのだ。そう、いるのだ。そこに。プリンスが。遠野晴翔が。

 そして今日も晴華がいつもの場所で本を読んでいると来たのだ。一度、いつもと違う席に移ってみたが、斜め前に座ってきた。あきらめにも近い状態になってきている。

 特に何か話しかけてくるわけではない。迷惑ではないが存在感が強すぎる。近くに虎が座っているような・・・そんな感じがした。

 アラームが鳴ったので席を立とうとしたその時だった。

「あの、渋川さん、最近、オススメの本ってある?」

 晴翔が声をかけてきた。不意打ちで声が出ない。

「あ・・・えっと・・・」

「急に声かけてごめん、びっくりさせちゃったかな。明日、教えてくれる?」

 びっくりして声が出せない晴華に晴翔はすぐに気を使った言葉をかけた。見た目も完璧、対応も完璧。

 動悸が治まらない晴華は教室へ急いだ。声をかけてくると思わなかった。急にオススメと言われても・・・晴翔がどういうジャンルが好きなのかも知らない。今、自分がはまっている本を勧めてしまっても良いのか・・・?

 本が恋人と思って過ごしている晴華にとって、恋人を紹介するのはハードルが高く感じた。

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