第8話 あたしは諦めてあげない(ルナ)
何なのよ、何なのよ、何なのよっ!!!!
こんなに可愛いあたしの告白を断るなんて
お兄ちゃん機能不全なんじゃないのっ!?
ああ、腹が立つ!!
あたしは目の前に転がっていた
石を怒りに任せて蹴飛ばした。
前の人のお尻に石が直撃してしまい
「いってぇぇっ!!!」という声が響く。
あ、やっちゃった。
あたしじゃないですよぉ~
という雰囲気を醸し出しながら
木々を眺めているふりをすると
その人は不思議そうな顔をして
歩き出した。
それにしても。
あたしを振るときのお兄ちゃんのあの表情。
申し訳なさそうで、悲しそうで、
妹に対しての愛情が滲んでいた。
その表情を見て察しちゃったんだよね。
ああ、あたしはきっとずっと
お兄ちゃんにとって『妹』なんだって。
だから悔しくて悲しくて
八つ当たりしてしまった。
今だってお兄ちゃんを避けちゃってる。
本当は「ごめんね、
あの時の言葉は冗談だから」って笑いたいのに
あたしの中のプライドがそれを許さない。
ていうか、なんで
あたしが謝る必要があるのよ!!
なんて思いながら
公園の前を通り過ぎようとすると
ベンチでキスをしている
カップルの姿が見えた。
やだ、こんな真昼間から!!
女性が顔を離して、
男性の茹でだこのような顔が露わになる。
ん? なんかあの人お兄ちゃんに似て……
「な、な、なんで今僕にキスを……⁉」
その声に確信した。
あたしはぎゅっとこぶしを握り締めた。
なるほど、お兄ちゃんがキスされてたわけね。
あの綺麗な人はお兄ちゃんが
好きな安西さんだ。
美少女にキスされて随分嬉しそうじゃない。
あたしの中で嫉妬の炎が
メラメラと燃え上がるのを感じた。
「あたしのお兄ちゃんに手を出すなんて……
やってくれるわね
やーめた。絶対お兄ちゃんのこと
諦めてあげないんだから」
あたしは
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