つよくてリスポーン! 異世界に召喚された俺は、死ぬと強くなって復活する、らしいが……!?
加藤雅利
第1話 異世界召喚されて3分で殺される。勇者のはずなのに
俺の名前は
ある日、急に異世界に転生、いや召喚された。
俺はどこにでもいる大学生だった。
といっても、女の子目当てでサークルに入っているマッシュルームカットのチャラいやつらとは違う。
目立たない方の部類に入る、学科内でも忘れられがちなタイプだ。
身長は一応170センチ以上はあるけれど、それがどうしたという感じだ。
友達は……まあ、いないこともないくらい。
適当に勉強しつつバイトして過ごす毎日。
これからも変わりなくぱっとせずに暮らしていくんだろうな。
そう思っていた。
ある
道を歩いていると、急に眩しい光を感じた。
目を閉じても視界が真っ白になるような強烈な光。
そして、体が浮遊するような不思議な感覚に包まれた。
な、何だ……!?
体が宙に浮いているような、落下しているような、よく分からない感覚だった。
そして——
◇ ◇ ◇
光が収まると、俺は石造りの大聖堂のような建物の中に立っていた。
壁のステンドグラスから色のついた光が差し込んでいる。
「はい?」
俺は建物のど真ん中にいた。
数メートル離れたところに鎧を着た騎士の格好をした者や、魔術師らしきローブを羽織った人たちが並んでいる。
「なんだこりゃ、異世界にでも転移したのか?」
「お察しの通り、我々があなたを召喚したのです」
丸眼鏡をかけた細身の修道士風の男が近づいてきて、戸惑う俺に教えてくれた。
俺の正面には短い階段があり、その先には王冠を被った、いかにも『国王』という男性が仰々しく大きな椅子に座っている。
白い髭を伸ばしているが、老人と言うにはまだ若い印象だ。
「私はこの王国の16代目の国王。魔王と戦うために勇者を呼び寄せたのだ!」
やっぱり国王か。
こちらを見下ろす位置で座ったままだ。偉そうな雰囲気が伝わってくる。
ってか俺、勇者なのか。
「ヨーロッパっぽい王国だけど、微妙に違うな」
「はい、ここはプレスト。アドランディカ大陸の6王国の1つです」
修道士が王国と大陸の名前を説明する。
当然初耳だ。
地理でも世界史でも見たことがないので確実に異世界だ。
「
「はい、陛下!」
王が修道士風の男に命じる。この男は鑑定官という役目のようだ。
鑑定官は俺の方を向くと一礼し、こちらに手をかざした。
「勇者殿、失礼します。――スキル『鑑定』!」
この展開は、俺の強さがどれくらいかを測定する流れだな!
俺からは何も見えないが、鑑定官は空中を見ながら視線を左右に動かしていた。
何らかの文字を読んでいるようだ。
「む……これは……」
鑑定官が珍しいものを見るように、感嘆の声を漏らした。
意外そうに目を丸くしている。
もしかして、俺はかなり強いのか……?
「どうだ? その勇者はどれほど強いのだ!?」
王が椅子から僅かに身を乗り出して聞く。
その声には期待が混ざっている。
「ええと、それが……」
鑑定官の眉間に皺が寄る。
スキル『鑑定』の結果とやらを2、3度、見直しているようだった。
そして、困ったような顔で告げ始める。
「名前:運賀礼司、レベルは……0です」
「は!? ゼロだとお!? ステータスはどうだ!?」
「HPは34。攻撃力……7。防御力8、魔力も1桁で、速さが13」
騎士や魔法使いたちからどよめきが聞こえる。
国王の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
多分、俺はめちゃくちゃ弱い。
「ならばスキルはどうだあ!? スキルさえ強ければ!」
「スキルは『つよくてリスポーン』……この勇者専用なのでランクは分かりません」
なるほど、俺は一応スキルを持っているらしい。
ますますゲームの世界のようだと思った。
鑑定官はスキルの効果も見えるらしく、説明を続ける。
「ええっと、スキルの効果は……『死ぬと強くなって復活する』です」
「そうか、ならば試しに殺してみよ!」
「は? なんてこと言うんだよこの国王」
俺は思わず声を上げた。いきなり殺すって何だよ。
「ちょ、待って。俺、勇者なんだろ?」
「貴様の召喚にいくらつぎ込んだと思っている! いつもの10倍だぞ10倍!」
「そんなことこっちの知ったことじゃないって!」
「ああ、そのことですが」
真面目そうな鑑定官が説明を始めた。
「大陸にある6王国は魔王軍に苦戦しているので、それぞれの国が1人ずつ勇者を出し合い、力を合わせて戦うことになっているのです」
「それがレベル0とは! 他の国より強い勇者を召喚するために
「見栄じゃないか! それ!」
しかもそんなことは俺には関係がない。
「無能な勇者ならば不要! 死んでよし! さっさと殺すのだ!」
王がヒステリックに叫んだ。
すると騎士たちが一斉に剣を抜こうとする。
それを、老齢の騎士が片手を広げて制した。
「お待ちください陛下! 丸腰で無抵抗な者を殺すなど……!」
話が通じそうな人がいる!
これは助かるかもしれない。俺は期待した。
「ははは団長! 雑魚ならどうせ魔王軍と戦って死ぬだろ! 俺が殺すぜ!」
なんだこいつは!
若い騎士が剣を抜き、団長と呼ばれた老齢の騎士よりも前に出る。
人を見下したような不敵な笑みの、がっしりとした体格の男だ。
「おい、マジで? ちょっと待てよ!?」
団長も「よせグランデ!」などと言っている。
しかし言うことを聞く気はないらしい。
剣を抜いた騎士は愉快そうに剣を振り上げ、俺に突進してくる。
こいつはスポーツマンな風貌だが、運動部にいる性格が悪いエースってタイプだ!
「くらえ必殺! スキル『メガスラッシュ』」
俺は後ずさって逃げようとするが、速さが違いすぎた。
騎士の剣が目にも止まらない速さで俺の肩から腰までを切り裂いた。
俺は大量の血をまき散らしながら床を転がる。
「がはっ……」
激痛と共に視界が暗くなり、意識が遠のいていく。
異世界転生して即殺されるとは思わなかった……。
◇ ◇ ◇
気がつくと、俺は再び大聖堂の中に立っていた。
死んだ瞬間の場所ではなく、最初に召喚されたのと同じ位置だ。
「え?」
自分の身体を触ってみるが、傷はない。服も血で汚れていない。
何事もなかったかのようだ。
「おお! 生き返ったではないか!」
「スキル『つよくてリスポーン』の効果と思われます」
「なるほど! 試してみるものだな!」
国王や鑑定官が感想を漏らす。
こっちは殺されたってのに……。
夏休みの自由研究じゃないんだぞ。
「もう1度測ってみよ! 復活して強くなっているのではないか?」
国王が命令し、鑑定官が俺を分析する。
俺が超強くなってたら国王をボコボコにしてやろう。
「結果は……レベル0! ステータスは先ほどと同じ、そして……」
「どうだ? どうなんだ?」
国王が再び玉座から腰を浮かせる。
今度こそと鑑定結果に期待しているのだろう。
「スキルがありません。消失しております」
「あ? 何だと?」
国王の表情が驚きから失望へ、周りの騎士や魔術師たちもため息をついていた。
「おそらく1回きりの復活能力だったのでしょう」
鑑定官が説明する。
それなら確かに消えるのも納得できる。
じゃあ、強くなってないのは何故だろう。
「レベルに変化が無いのは、0に何をかけても0ということでは」
鑑定官が見解を述べた。
がっかりな結果だし、せっかくの復活スキルも殺されたせいで消費してしまった。
ふざけるなよ……。
「それでは意味がないではないか! ふざけるなああぁぁ!」
国王もキレている。
「ははは、レベル0にスキル無し。一般人、いやそれ以下だな!」
俺を殺したグランデが面白そうに笑う。
「もうどこへでも行ってしまえ! 2度と顔を見せるな!」
国王が手をブンブンと振って、俺を追い払うような仕草をする。
「え、追放? 俺は勇者なんだろ?」
「追放で当然だ! 使えない勇者などいらん! 次は普通に召喚の儀式だ!」
俺は騎士たちに囲まれ、大聖堂の外に連れ出された。
そして城を囲む壁の外へと放り出される。
◇ ◇ ◇
城壁の門を出てすぐに、プレスト王国の町が見えた。
中世ヨーロッパ風の建物が立ち並び、石畳の道を人々が行き交っている。
「はあ……マジで異世界だ」
勝手に召喚されて、すぐに無能認定されて、いきなり殺されて、追放される。
なかなか理不尽な展開だ。
「これからどうすればいいんだ……」
俺は門の脇に座り込んで、ため息をついた。
「おいスキル無し勇者。通行の邪魔だ。これを持ってさっさと行け」
30才ほどの中堅といった雰囲気の騎士が背後から話しかけてくる。
俺が召喚された時にいた騎士の1人だろう。小さな布袋を俺に渡してきた。
「騎士団長に感謝しろよ。数日分の宿代をお前に渡してやれとの命令だ」
「団長はいい人なんだな。それで、この後はどうすれば?」
「冒険者ギルドに行けばいいんじゃないか? お前に冒険は無理かもしれないがな」
そう言うと騎士はさっさと城の中へ戻って行った。
親身に助言や道案内までしてくれるつもりはないようだ。
けれど、宿代ができただけマシか。
俺は城下町を歩いて、冒険者ギルドとやらを探すことにした。
ゲームのようにモンスター退治などの仕事があるかもしれない。
城下町には活気があり、大通りには様々な店が並んでいて、食堂からは微かに笑い声が聞こえてくる。行き交う人々の表情は明るかった。
魔王と戦っていると聞いていたけれど、この国は安全な場所にあるようだ。
しかし、俺は一人ぼっちの状態で異世界にいて、誰も頼れない状態だ。
レベルが0でスキルもない一般人以下、数日で所持金が尽きる。
かなりピンチだ。
「そういえば、自分のステータスって確認できるのか?」
鑑定官は周りには見えない表示を読んでいた。
あれは『鑑定』スキルだから、他人のステータスを見るものかもしれない。
それなら、自分のステータスくらいはスキルがなくても分かるんじゃないか?
俺は試してみることにした。
「ステータス、オープン……」
と呟いてみる。
すると目の前に半透明のウィンドウが現れた。
名前:運賀 礼司
レベル:0
HP:34
攻撃力:7
防御力:8
魔力:9
速さ:13
スキル:つよくてリスポーン(礼司専用)、ステータス
「あれ?」
俺は目を
スキルあるやんけ。
間違いない。
『つよくてリスポーン』の他に、2つも表示されている。
鑑定官にはスキル無しと言われたのに。
これはいったい、どういうことなんだ……?
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