第8話 3年後

「なあ、聞いたか?」


大学の友達、佐久間くんが顔を

グイッと近づけてくる。


「聞いたかって……何を?」


「ほら、今話題のsayaって歌い手の曲だよ!

当然お前も知ってるだろ?」


「saya?知らないけど」


そう答えると佐久間くんは大袈裟に

ショックを受けたような表情を浮かべて

「オーマイガッ!!」と頭を抱えた。


一体何なのだろうか。

ガシッと両手を掴まれまたも

佐久間くんの顔が近づく。


「yooutubeに上がってるMV観てみろ。

めっっちゃいい曲だから!!」


音楽、か……。

2回も音楽にまつわることで

苦い経験をしたからな……。


「ちなみになんてタイトルなの?」


「『金木犀の恋歌』」


金木犀、という単語に心臓が跳ねた。


金木犀の匂いと、彼女の笑顔。


まさか。


大学が終わってから佐久間くんからの

遊びの誘いも断り一直線に帰宅して、

ノートパソコンを開く。


yooutubeでsayaと検索すると、現れたのは

金木犀を想起させるようなオレンジ色の線で描かれた女の子のイラスト。


女の子は切なげに

涙を流しながらこちらを見つめている。


震える指で、再生ボタンを押すと

バラード調の音楽が流れてきた。


『忘れられない貴方の香り。

目を瞑っても、貴方を思い出す。』


儚い声が秋の風のように耳に飛び込んでくる。


この声は。

この歌声は。


間違いない。

彩華ちゃんだ。

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