第4話「ゼロの敗退、残る数字」
二回戦の相手は、リーグ屈指の強打チーム・ノーザンズ。星影ナインの夏は、日程表どおりならここが山場で、たぶん終点だとみんな知っていた。僕のスコアブックの残りページは、ちょうど一枚になっていた。
浅間の立ち上がりは悪くなかった。外角低めの直球とチェンジアップでゴロを量産し、四回までに許した走者は二人だけ。それでも、五回。先頭打者の当たり損ないが三遊間を抜け、送りバント、一、三塁。内野は前進守備。
里見は外角のボールゾーンにスライダーを要求する。ファウル。もう一球、外へ。打者は食らいつき、詰まったフライが右翼と二塁の間にぽとりと落ちた。タッチアップにはならない打球だったが、一塁走者はスタートを切っており、間一髪で三塁へ滑り込む。その間に三塁走者がホームイン。スコアブックの五回の欄に、僕は小さく「1」を書き足した。
こちらの攻撃は、ランナーこそ出るものの、あと一本が出ない。六回一死二塁、九条の送りバントは完璧だったが、次の打者のライナーが投手のグラブを直撃し、そのまま二塁へ送られてダブルプレー。ベンチ前で、誰も責める言葉を口にしない沈黙が続いた。
七回表、最後の打者になったのは鷲見だった。普段どおりインコースぎりぎりに立ち、全力で肘をたたむ。打球は良かった。右翼の頭上を越えかけて、風に押し戻される。外野手のグラブに収まった瞬間、審判の右手が空へ伸びた。0−1。ノックアウトではない負け方。それでもスコアブックの最終ページは埋まった。夏がここで終わることだけが、はっきりした数字だった。
閉会の挨拶のあと、リーグ事務局の人間が浅間を呼び止めた。隣には、あの黎明リーグのスカウトがいる。「秋にテストがあります。興味があれば」と差し出された名刺の端を、浅間はしばらく見つめていた。僕の膝の上のスコアブックには、まだ何も書いていない余白が一つだけ残っていた——“進路”という欄だ。
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