エフューの宝箱

もちもちしっぽ

『魔道士ルルリェの手記』②




 わたしがその街を訪れた時、妙に甘ったるい匂いが鼻孔から侵入した。

 それもそのはず。

 空には砂糖菓子の雲が浮かび、柵の内に放された羊さえ甘い匂いを漂わせている。

 なんと、城壁には角砂糖が積まれているではないか。


 あるはずのない現実に、わたしの拳は手近な壁に戸惑いをぶつけていた。

 しかし叩けば崩れるはずの城壁はびくともしない。しかも不思議なことに、どんなに拳を叩きつけようと、わたしの手が痛みを覚えることもなかった。


 さらに奇妙な話は続くが……、わたしの気が触れたのではないと信じてほしい。


 なんと、この街には子供しかいなかったのだ。

 大人と呼べる者がどこにもいない。子供らだけで暮らしていたのだ。


 そこは、まるで莫迦ばかげた街だった。


 だがあまりに莫迦げていたため、わたしは迷わず、この地が「探し求める宝の眠る地」であると確信できたのも確かだ。




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