方向音痴でポンコツ、でも根は優しくて勇気だけは一人前——そんな青年アズルの“最初の一歩”が、笑いと温かさとワクワクで満ちている冒頭短編。
雨に打たれ、空腹で倒れ、鳥をから揚げと見間違えるほど追い詰められた主人公が、サラピという小鳥(魔物)と出会うことで、物語が一気に動き出す。
アズルの情けなさと純粋さ、サラピの毒舌と愛嬌のバランスが絶妙で、掛け合いだけで読者を引っ張る力がある。
そしてゴブリン戦。
“強くないのに、誰かを守るためなら動ける”というアズルの本質が一気に花開くシーンで、読者は彼の成長物語をもっと見たくなる。
コメディから一転して熱さが走る構成も見事。
キャラの魅力、テンポの良さ、読後の爽快感。
短編でありながら、長編の幕開けとしての期待感をしっかり残す、非常に完成度の高い冒頭。