カムフラージュ/いとこ同士

加藤小織

  カムフラージュ1

 ノックもせず突然、部屋に入ってこられたことに驚き。言われたことが上手く聞きとれず。

「何、公佳きみか。悪いけど、もう一度言って。」と訊き返した。

 姉の公佳きみかとは一歳違い。でも姉が4月2日生れ。妹の私が4月1日生れということで同学年ということもあり。互いに、

「公佳。千佳ちか。」と呼び合っている。

 時間は夜の10時過ぎ。寝ていたわけでもなければ、着替えていたわけでもないのでノックもせず突然、部屋に入ってこられたことを怒りはしない。

 私が言われたことを聞き返すと姉は照れ臭そうに、

「私。父さんの子供を妊娠した。今日、大学を休んで病院にいったら三ヶ月だって。」と言ってきた。

 今度は、しっかり聞いていたつもりだったが聞き間違えかと思い。

「三ヶ月って。」と訊き返すと姉は躊躇うことなく。

「だから父さんの子供を妊娠して、三ヶ月だって。」と言い。その一言に驚いた私は、

「はぁぁ!-」と叫んだ。

「父さんの子供を妊娠した。」なんて言われれば、私でなくとも驚き叫ぶと思う。

 確かに父の公介こうすけは早くに私たちの母である妻を亡くし、ずっと独身でいるけど。揶揄からかわれているのかと思い。

「こんな時間に何、揶揄からかいにきたのよ!」と少し怒った口調で姉に言っていった。

 その言い方が癪に障ったのか。

揶揄からかってなんかいないわよ!」と私以上に怒った口調で言い返してくると姉は、

「8月の上旬。父さんと私以外、外泊していたことがあったじゃない。」と、父の子供を妊娠した経緯らしきことを話しはじめた。それによると・・

 8月上旬の夜。同居している父の双子の弟で叔父の草介そうすけは仕事でW歌山に。その長男で姉や私と同じK戸大の四年生・千尋ちひろはH海道に、友達と少し早い卒業旅行に、そして千尋の弟で同じくK戸大の二年生・理久りくは、私とO阪まで飲みにいき。そのまま二人でビジネスホテルに泊まった夜。

 住み込みで働いてくれている三人の家政婦さんたちも、それぞれの事情で休暇をとり留守だったということで、姉と父は父の部屋で飲むことにしたそうだ。

「飲むことにしたって何を。」

「洋酒類。」

「19歳って未成年じゃなかったけ。」

「細かいことは言わないの。自分だって、理久君とO阪に飲みにいっていたでしょう。」

 それを言われら偉そうなこと何も言えないが。それよりも、父も姉も軽く飲むつもりだったらしいのだが、ついつい度が過ぎ。我を忘れるぐらい泥酔するほど飲んだらしく朝。目が覚めたら、二人揃って全裸でベットに寝そべっていたそうだ。

「それだけで何故。父さんの子供ってことになるの?」

「そのときは私も父さんも性交したなんて思わなかったわよ。父さんも、そんなこと言ってないかったし。」

 だけど姉曰く。

「彼氏いない歴十九年。妊娠が判明した今日まで処女とばっかり思っていたから、そのときに父さんと性交したとしか考えられないのよ。」ということだ。

 病院にいったのは、月のものが一ヶ月以上こず。最近やたら吐き気を催すようになったので、何処か悪いのではないかと思い、病院にいったら妊娠が判明したらしい。

 同じ大学といっても学部は違うし。とっている授業も違うこともあり。今朝は一緒に大学へ登校しておらず。姉が大学を休んだのも病院にいったのも知らなかった。それはともかく。

「父さんには言ったの。」

「ううん。まだ、何て話していいかわからなくて。」

 そりゃそうだろう。話しても、娘と性交したなんて認めないだろうし。妊娠したなんて言えば即座に、

「中絶しろ!」と言われるだけだもの。すぐに中絶させられるとは思うけど。

 父にどう話そうか、二人で迷いに迷った結果。父に話す前に、叔父の草介に話し。どう父に話すか相談することにした・・

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