星の姫と戦車の王子 ― 運命に導かれた最強パーティー
@kureha_akai
第1話 理知のソーサラー
少年は幼き頃から、物事を俯瞰して捉える冷静な眼差しを持っていた。
戦場に立てば敵の布陣を瞬時で見抜き、味方がどこに力を注ぐべきかを論理的に導き出す。
彼は剣を振るう前衛ではなく、後方から魔法を操る魔法使い…いわゆるソーサラーである。
だが、ただの魔法使いではない。
幼い頃から本から得て蓄えた豊富な知識により、若干ながらも治癒魔法も扱えた。
その力は仲間を支える支柱となり、戦場においては冷静な判断と治癒の光をもたらす。
少年の名は――『レオン』
小国アルヴァリアの第一王子である。
アルヴァリアの王家には、女神から贈られたタロットカードを握り生まれてくるという奇妙な逸話がある。
ここ数十年はそういったこともなかったのだが、久しぶりに女神の祝福を得てレオンは『戦車』のタロットカードを握りこの世に生を受けた。
『戦車』のタロットカードが示す「突破」「勝利」はレオンに何をもたらすのか。
それは女神のみぞ知るところである。
アルヴァリア王家の子供は15歳になると城を出るというしきたりがある。
レオンは15歳となったその日、冒険者になる道を選んだ。
幼き頃に読んだ絵本の冒険譚。
世界を旅しながら悪い魔獣を倒し、英雄となって人々に敬われる。
刺激の少なかった城内で、刺激的な冒険に憧れるのも無理もなかった。
身分を隠して冒険者登録をしたレオンが城を出てから早3年が経とうとしていた。
冒険者としての才能をいかんなく発揮し、めきめきとレベルを上げてギルドでも期待の若手として少しは名を馳せるようになっていた。
パーティーにおけるレオンの役割は後方支援もそうであるが指示出しがメインである。
彼の指示は常に合理的で的確であり、無駄を排し最も効果的な手を選び取る。
仲間たちは彼の言葉に従うことで生き延び、最終的には勝利を掴み取ることができた。
もっとも最初から何もかもが上手くいっていた訳ではなく、むしろ駆け出しの頃は
経験も足りないうえに子供の指示に従うものもいなかった。
それで幾度となく危機を迎えたこともあったが…。
少しづつ実力を蓄え、経験に裏打ちされた指示が出せるようになるにつれ、仲間たちの信頼を得るようになっていった。
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