最強だった元魔法少女は息子が魔法少女になりそうなので全力で阻止します!

一大路 枝成

第1話 奥様は元魔法少女

 ぽっかりと空いた暗い暗い世界の中心に一人の少女がぼんやりと淡い光に包まれながら深い眠りについている。もう何年も目覚めていないその少女を煌めく王冠を被った小さな妖精の女王が静かに見つめゆっくりと近付いていく。

「・・・時は満ちた。」

 妖精の女王は少女に手を伸ばし厳かに言い放つ。


「今こそ目覚めよ!最強の魔法戦士プレシャス☆マホよ!」


 夜の暗闇が昇っていく朝日によって空が白く色を成して陽光が煌めく川沿いに並ぶ桜が舞い散っていく。傍らにある静かな住宅地の中でこぢんまりとした家から窓を開け放ちアクビをしながら伸びをする主婦が姿を見せる。

「んん~!」

 早くから会社に勤める旦那と小学校に通う10歳になる息子の新学期が始まる今日、寝ぼけ眼を奮い立たせるように彼女は胸の前に握り拳を作って笑顔をみせる。

「さて今日も頑張っていきますか!」


 皆様おはようございます!私は馬場麻保、専業主婦をしておりますの。素敵な主人と可愛い息子のため日々奮闘しております。

「アナタ!ネクタイ曲がっているわよ!正義!学校のプリントは持ったかしら!」

「持っているよ!」

 主人のネクタイを直しながら麻保は息子の正義の返事を聞くと、二人にキスをしていく。

「2人ともいってらっしゃい!」

「行ってくる。」

「いってきま~す!」

 慌ただしく主人と息子を送り出した後、麻保はいつもと変わらぬ家事をゆったりとしていく。そんな毎日を過ごしております私ですが最近悩みができましたの。


「まさか昔のステッキがまだウチにあったとはね~・・・。」


 昨日新学期の準備のため物置に足を運んでいた時、偶然魔法少女時代に振るっていた魔法のステッキが出てきたのです。そのワンドの先端には天使の羽がついたハート型の宝石が埋め込まれ棒状の筒の中に様々な色をした星型の魔法石が詰まっていましたの。

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