現実バウンダリー

余白

第1話 現実バウンダリー

これは、あなた自身の物語だ。


2025年。

私たちのスマートフォンの中には、SNSアプリが当たり前のように存在している。

誰もが毎日、無意識のうちに画面を開き、誰かの人生を眺めている時代。


——あなたは、どちら側に存在しているだろうか。


日下部恵美(くさかべ えみ)、20歳。

どこにでもいる、ありふれた女子大学生だ。


特別に目立つ存在ではない。

友人関係は広く浅く、深い人間関係は少し苦手だった。

大学の授業は退屈で、特になりたい職業もない。

単位を取るためだけに教室に座り、時間が過ぎるのを待っている。


夢も、希望も、恵美にはなかった。

ただ「普通」に生きて、「普通」の幸せを手に入れられれば、それでいい。

そう思っていた。


共働きの両親と、三つ下の弟。

家族仲は、良くも悪くもない。

大きな不満はない代わりに、強い絆も感じられなかった。

親に余計なことを言われないよう、成績だけは無難に保ってきた。


今日も恵美は、意味もなくSNSを開く。


画面の中には、美しい女たちが溢れている。

整った顔、細い身体、楽しそうな日常。

彼女たちは皆、幸せそうだった。


羨ましい、と思う。

理由ははっきりしている。


——彼女たちは、私にはないものを持っている気がしたからだ。

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