第4話

⦅付⦆

『ドキュメント・さよならジュピター』(仮題)企画書       

澤田芳郎・千葉和彦 2020. 8. 8 


1、企画趣旨

 

 小松左京原作・脚本・総監督の映画作品『さよならジュピター』(株式会社東宝映画=株式会社イオ提携作品、1984)。

 同じ小松左京原作の森谷司郎監督『日本沈没』(東宝、1973)や深作欣二監督『復活の日』(角川春樹事務所=TBS、1980)にも比肩しうる作品、画期的なSF映画として、それは世に問われるはずでした。

 ところが封切られた作品の評価は決して高くなく、十分な観客を集めることもできませんでした。制作費はDVD化やテレビ放映でようやく回収されたと言われます。

 この「計算違い」はどうして生じたのか。それを解明することがこのドキュメンタリーの第1のテーマです。

 一方で映画制作は多くのクリエイターが関わり、さまざまな投資者の意図の交錯の中、不安定、不確実な環境のもと『さよならジュピター』に行なわれる独得の「ものづくり」です。その中からどんな傑作も駄作も偶然生まれてきます。

 この過程の分析は今後いっそうのクリエイティビティを求められるわが国のあらゆる産業分野、文化分野にとって意義があり、人々が関心を持てる映画制作を事例とすることを含めて、本ドキュメンタリーの第2の(より重要な)テーマとなります。

 企画提案者のうち千葉和彦はシナリオライターで、小松左京作品のテレビドラマ化企画(実現せず)に従事したこともあります。そして40年前の小松左京氏が何を考え、何を実行に移したかに深い関心を持ち、偉大な小説家による映画制作をめぐる諸事実を映像に残したいと思ってきました。

 澤田芳郎は『さよならジュピター』のパソコンCG制作に参画し、小松氏が作品の結末に関連してシナリオにないシーンの撮影をスタッフに強く要請する場面を撮影所で目撃しました。その経験を千葉と吟味するうちに、いくつかのポイントが見つかります。

 かくして本ドキュメンタリーは企画されました。

 本作品の制作には、小松左京ライブラリ等からの未公表資料の提供も期待されます。加えて映画制作に従事した関係者の証言が得られ、映像に定着できれば、本作品はいわば「映画制作の不確実性モデル」に基づく分析を特徴とする映画メイキング・ドキュメンタリーとなります。


2.「計算違い」はなぜ生じたか

 

 上記の「計算違い」がなぜ生じたかについてはいくつかの説がありますが、

・ コンセプトの失敗(主人公の死に物語上の必然性がなく、テロリストの動機も不明)

・ ビジュアルの失敗(本編と特撮の統一感不足)

・ マルチメディアの失敗(先行した小説版と結末が同じ)

・ コミュニケーションの失敗(没入感の醸成不十分)


などが指摘されます。

 本ドキュメンタリーではこれらに注目しつつ、


● 企画・制作プロセスの分析、意図せざる結果が生まれた経緯

● 最後まで最善を尽くした制作スタッフらの奮闘と、数十年を経ての総括

● クリエイティビティ発揮に向けたビジネス一般への示唆


を描き、厳しさの中にも抗しがたい映画制作の魅力の表現を通してテーマを追求します。

 本作のための重要な参考文献には、小松左京『小松左京自伝』(日本経済新聞出版社、2008)、下村健寿『さよならジュピターをつくったわけ』(MARIBU出版、2011)、田中文雄『神(ゴジラ)を放った男 ~映画製作者・田中友幸とその時代~』(キネマ旬報社、1993)などがあります。映像素材としては『さよならジュピター』そのもの、メイキングビデオ、小松左京ライブラリ等から開示される各種資料が考えられます。

 さらに田中友幸、田中文雄両プロデューサーが脚本家・永原秀一氏(初期ブレストにも参加)に発注したシナリオの存在が知られています。決定稿となった小松左京執筆=橋本幸治補作版とは異なるシナリオで、取材と並行して行なわれる探索は、それ自体がサスペンスとなりえます。

 以上の作業を通して『さよならジュピター』の制作プロセスを明らかにすることは、小松左京氏の「失敗」を詳らかにする面がありますが、それを経て、同氏とその作品の真の再評価も可能になると考えます。本ドキュメンタリー作品においてもかかる要素を一部盛り込むことで、コアなファン層の了解も得られるようにします。


3、取材対象

 

 インタビューの進行に伴って新資料が発掘されたり、重要な証言者が見つかる可能性もありますが、当面は当時の制作スタッフ、その他関係者、映画業界の知識人から始めます。 制作スタッフは本編、特撮の助監督や製作担当を中心に、あらゆる職能の方々を訪問し、

各セクションで見た当該制作プロセスの機微を聴き出します。

 その他関係者、業界知識人として取材先に想定されるのは次の方々です。

(中略)


 なお、取材・ロケの経費、音楽著作権料、俳優の出演料は、企画を請けた制作プロダクションが支払うものとします。

 再現ドラマの必要性により予算・決算の額は上下します。






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さよならジュピター再起 千葉和彦 @habuki_tozaki

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