たーちゃんとクリスマス

兎森うさ子

1.


ぱちっと目を開けた。


見たことがない天井、と思ったのもすぐそばに感じた隣を見たことから昨日のことを思い出した。


ここは"たーちゃん"の部屋。クリスマスであったことから、"たーちゃん"の家にお泊まりしたのだ。


大好きな両親と離れてお泊まりをしたことがなく、寂しく思ったけど、元々"たーちゃん"の家にお泊まりしたいと言ったのは自分だ。そうしたいと思ったぐらい同じくらい大好きな友だちといつもよりも一緒にいられて、寝られるのが楽しみだった。


ごろん、と横向きになり、静かに眠る"たーちゃん"を見つめた。

"たーちゃん"も遊びに来た時、楽しみにしてくれていたようで嬉しそうにしていた。

そのことを思い出すと自然とにんまりとしてしまう。

お泊まりしたいと言って良かった。


寝ている顔を改めて見る。

日中見ることはまずない初めて見る寝顔は、"たーちゃん"が大好きな"まま"に似ている綺麗な顔立ちで、その顔さえも可愛い。

ずっと見ていても飽きない。


小さく開けていた口がむにむにと動き出した。

それはただ動かしただけかもしれない。けれどもたとえ発したとしてもその口から言葉が発せられることはなかった。

傍から見れば静かに眠っているように思えるその口から、いつしか寝言を聞いてみたいと思った。


『しゃべれるようになりたい』


ある日"たーちゃん"はボードを介して言ってきた。

それはきっと"たーちゃん"ままが感動していたことがきっかけだったのだろう。

それが一番のきっかけなのが"たーちゃん"らしいと思ったけど、言葉が全く話せない時からそれとなく"たーちゃん"の気持ちが分かり、仲良くしている仲だからそう言ってきたのかもしれないと思うと、とても嬉しい。


たーちゃんが可愛い。

たーちゃんのためにやってあげたい。

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