11
また1週間ほど雪乃が学校を休んだ。
以前「全然心配しないで」と笑顔で話していたので、綾が騒ぐこともなかった。
ただ、やはり寂しいものはあるようで名前を話題に出してくることはあった。
ある日の放課後、山田が「ちょっと積もってるから、また雪合戦でもやる? 掻き集めれば出来ないことはないだろう」と言い出した。
「前にクラスでやった時、風邪をひきかけてたじゃん」
「でも、楽しかったろ? またやりたいって言ってたよな?」
「それは……まあ、そう」
そんなカップルの話を聞いたクラスメイトが数人集まり、放課後のグラウンドに賑やかな声が響いた。
直は地面の雪を鷲掴みにし、感触を確かめるように揉んでいる。
それに気付いた山田が「手袋は?」と問う。
「素手だと、すぐに手が駄目になるぞー?」
「別にいいよ」
「珍しく自分から来たと思ったのに、全然やる気がないな……」
やれやれと肩を竦める仕草のあと、「お前も元気出せよ」と言った。
しかし、言われたほうである直は眉一つ動かさない。「なにが?」と返している。
山田は「まあ、いいや。雪合戦楽しむぞ!」と、直の腕を引っ張って歩いた。
* * *
1週間の欠席後、登校してきた雪乃はニコニコと笑っていた。
その様子に「ご機嫌だね」と綾がにやにやする。良いことがあったに違いないという目をしている。
綾の追求から逃げるように雪乃は直の席にやって来た。
「今日も図書室にいるの?」
「うん」
「良かった……。先週は返せなかったから、今日返すね。期限過ぎてるから怒られたりしないかな」
不安そうに呟く。
そんな雪乃に対して、直は本から視線を外すことなく、淡々と告げる。
「貸し出し延長にしておいた」
これには雪乃は目を丸くて、気遣いを噛みしめるように「ありがとう」と笑う。
* * *
更に次の返却日、雪乃が借り続けているシリーズの続きが抜けていた。
人気タイトルというわけでもないのに、たまたま先に借りられてしまったようだ。
「今日は借りるものがないかも。ミステリーってあまり読んだことがないんだ。難しいかな?」
「好みによる」
「うん、違うジャンルも試してみるね。ずっと同じは安心だけど、変わらないもん」
俯いて呟いたその口ぶりは、まるで何かを含んでいるようにも聞こえた。
雪乃はゆっくりと読み慣れない本を進めていく。
それを横目に直は返却された本を棚に戻し始めた。最後の一冊は戻さずに自分の鞄の中へと滑らせる。
……それが雪乃が探していた本だと知っていても。
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